第13話 団体戦!④(予選2回戦ー2)
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序盤から相手は「棒銀戦法」での攻めを主張している。
一方で僕は矢倉囲いを組むつもりだ。
(間に合うか?)
これまでの特訓は、高槻さんも茨木さんも「振り飛車党」だ。
対居飛車戦はあまり指していない。
しかも、僕の得意の棒銀で相手はやってきそう。
自分の得意戦法で負けるのはちょっと嫌だな。
だけど、何ができるのかはわからない。
(矢倉は固い。きっと守れる)
そう信じ、「▲5八金」と囲いを進める。
「△8四銀」
次に「△9五銀」を指すぞと言っている。
これは許せない。
「▲9六歩」
と銀がでられないように守る。
「△9四歩」
「▲6七金」
と矢倉の鎧を完成させる。後は角をどけて、玉を8八にするだけだ。
そう考えた矢先、
「△9五歩」
としかけてきた。
※相手の歩の前に自分の歩を置くことを「(攻撃を)しかける」と言います。
※これは「自分の準備は整っている、攻めきれるよ」とアピールしていると相手は捕えます。
(はやい)
「▲同歩」と受けざるを得ない。
「△同銀」とすかさず銀を捨ててきた。
(これはどう攻めてくるんだろう?)
「△9六歩」があるので、これは
「▲同香」の一手。
「△同香」
「▲9七歩」と後手の香成を防ぐ。
こちらの守りを突破されてしまうと、そのまま終盤戦にまでなりかねない。
現状は銀、香交換で、僕が有利だと思う。
ただ、こちらは一切攻めていないので、実は有利とも言い切れない。
相手は「△8三香」と飛車の前に香車を置いて9筋に続いて、今度は8筋の突破を狙う、
(序盤から激しいな)
高槻さんたちと出会う前の友だちとの将棋を思い出す。
ノーガード、ファストアタック。
受けを考えないで相手よりも早く攻める。
早く攻めたほうが勝ち。
わかりやすくて、面白い。
何しろ、自分の守りを心配しなくてよかったのだ。
けれど、囲いを作ることで”相手の攻めの速度を遅らせる”ことができることを教えてもらった。
もっとも、最初は本の見様見真似だった。
だけど、きっちり守れば、相手は攻められないことを高槻さん、茨木さんに教わった。
固い守りは強い。
この対局はどうやら「攻めVS守り」のわかりやすい勝負になるかもしれない。
相手は今の銀香交換のように、駒損を気にせず攻めてくるだろう。
攻め切れば相手が勝ち、受け切れば僕の勝ち。
わかりやすい。
盤面が進む。
どうやら、この攻防戦は僕が勝ったらしい。
相手は持ち駒が歩のみになった。
だけど、勝負は終わらない。
相手は囲いに入る。
僕と同じ矢倉囲いだ。
次は僕の番だ。
攻め切れば勝ち、守り切れれば負ける。
強い人ならば、きっと簡単に勝てるのだろう。
だけど、僕はそんなに強くない。
持ち時間はお互い5分ずつ。
僕と相手のテンションは高まっていく。
時間が切れると負けなのでそこも注意しないと・・・・。
攻めるポイントは「足し算の攻め」だ。
ある地点を集中的に攻める。
枚数が1枚でも勝てば、その地点は破れる。
その地点を破れば、相手の玉が攻め駒の前に顔を表す。
その場所は、僕の得意戦法の棒銀がもっとも発揮される1三の地点だ。
相手の玉が2二にいる。
(ここだ。ここで決めるんだ)
攻撃をしかけて失敗すれば、次は必ず負けるだろう。
だけど、勇気がなければ相手に勝てない。
残り時間を確認して、心の中で一歩進みだす。
「▲1五歩」
いわゆる端棒銀というものらしい。
友だち同士でよくやった作戦。
さっき、相手が仕掛けてきたのを僕も同様に仕掛けるのだ。
違いは僕の角のあった地点が相手の玉に変わっただけ。
この1駒の違いが勝負を分けるんだ。
特に居飛車戦ではこの微妙な違いが大きく変わる。
強い人との居飛車戦はあまり指したことはないけれど・・・・。
さっき決意した気持ちがやっぱり揺らぐ。
強い人と戦うってことはこういうことなんだ。
(負けるかもしれない)
その怖さ以上に今、
(勝ちたい)
と思った。
更に盤面が進む。
最終盤だ。
相手の玉が見えた。
これは捕えられる。
相手は逃げる。
(こういうときは・・・・)
逃げようとする先に駒を置いて退路を塞ぐ。
(これで逃げ場はない!)
数手の先、
「参りました」
と、相手が言った。
僕は勝った嬉しさよりも先に
「ありがとうございました」
ということばが先に出てきた。
「「初勝利おめでとう」」
と僕の両側から声が聞こえた。
高槻さんと茨木さんの声だ。
「ありがとう」
僕は二人にそう言った。
その後、すぐに感想戦をした。
先に攻められたことが怖かったこと。
受け切って勝てそうだと思ったこと。
棒銀に2二玉は攻めやすかったこと。
相手は8級だったらしい。
僕は格上に「平手」で勝ったんだ。
「ありがとうございました」
感想戦を終えた後、僕はどっと疲れが押し寄せた。
緊張が解けたのかな・・・・。
団体戦は3-0で勝ったみたい。
予選通過は決まったものの、お姉さん二人は僕の勝利を本当に喜んでくれた。
勝った以上に、喜びが湧いてきた。
これが、分かち合うってことなんだ。
ママも妹も本当に喜んでくれた。
次の予選は昼ご飯の後らしい。
「昼ご飯にいきましょう!」
皆でファミリーレストランに向かった。
ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。
これらは私にとって大きな勇気になります。
よろしくお願いいたします。




