第10話 団体戦!①(試合前)
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今日はママと妹と3人でお出かけだ。
電車に乗って、目的地まで行く。
降りた時に載った電車を見送ってバイバイするのが楽しい。
車掌さんも僕の方は見ないけれど、いつも手を振ってくれる。
反応があるのが嬉しい。
9:30に集合場所の市民センターに着く。
高槻さん、茨木さんもママと一緒にきていた。
「はじめまして、高槻雛の母です」
「茨木優の母です」
「水無瀬達也の母です。今日はお誘いいただいてありがとうございます」
と、親同士の会話で始まる。
「「水無瀬君、おはよう!」」
と、高槻さんと茨木さんの元気な声、やる気が十分だ。
「高槻さん、茨木さん、おはよう!」
こちらも元気であいさつを返す。
「10:00に受付開始だって。それまで少し待ってようか」
と、高槻さんの声で3人のお話が始まる。
いつも、友だち同士の話なら、テレビや漫画の話ばかりなんだけれど、この3人はいつも将棋の話ばかりしている。プロの棋戦を見ているわけでもない。自分たちの指した将棋についての話ばかりだ。
「そういえば水無瀬君、「穴熊」はしないの? 強い相手にはおススメだよ?」
と、この直前にて高槻さんのアドバイス。
「僕が穴熊をすると、相手もしてくると思うんだ。穴熊に組まれると勝てないから、早く攻めたいんだ」
と、この一カ月の特訓で感じたことを口にした。
「なるほどね。なら、こういう考え方もあるよ? 自分が攻めにくいと感じているならば、相手も同じことをされると攻めにくいと感じるんじゃないかな?」
と、茨木さんの更なるアドバイス。
「たしかに。参考にしてみます」
と、一応返事した。
だけど、まったくやったことがないので、いきなり本番では難しい。
暇ができれば、観戦してみようかな、と考えていた。
「あそこに将棋盤があるよ。ちょっと、穴熊やってみようよ」
と高槻さんに誘われて、3人が移動する。
僕は居飛車、高槻さんと茨木さんは振り飛車だ。
僕は高槻さんに指示された隣に座る。
「じゃあ、私が説明するね。先手番は水無瀬君でいいよ」
と、茨木さんが僕の体面に座った。
いつもの座り方だ。
高槻さんが隣にいるとどうしても体が熱く感じる。
ばれてしまわないかという不安にもどきどきする。
そんな気持ちを抑えつつ、「2六歩」と指した。
・・・・
「穴熊は固いのでこっちも嫌なんだ。だから、相手が「穴熊を指すぞ」って合図を出したら、こちらも仕掛ける準備があるの。だから、この手には気を付けてね」
と、説明が続く。
僕が指して気になる手ってのは「7七角」らしい。
もともと角は「8八」の場所にいて、ななめはいくらでも動ける。
「7七角」とするのは、相手が居飛車で「8五歩」としてきた時に、角で「8六」の地点を受けるためだ。
振り飛車はそもそも「8五歩」にならないので関係ない。
それでも、あえて「7七角」とするのは、「玉を「8八」に移動させますよ」というアピールになるためだ。
「8八」は相手の角が睨んでいるラインになるので、良い場所とは言えない。
だから、「8八」の先の「「9八」「9九」まで移動します」という主張になるのだ。
穴熊囲いを潰す一番楽な方法は「組まれる前に攻撃を仕掛ける」こと。
囲いを組まれてしまえば、確かに攻めはむずかしくなる。
一方で完成には多くの手数がかかる。
囲いを完成させるか、完成させる前に潰されるか、序盤から決戦になりかねない。
試合前の練習でも相当に頭を使った。
「ふぅぅ」
僕は教えてもらった後、大きくため息をついた。
「将棋ってこんなに頭を使うんだね」
だからこそ面白いんだ。
「まぁ、慣れないことだと思うので無理しないでね」
茨木さんがフォローを入れた。
そして10:00になった。
高槻さんを先頭に6人で受付に向かう。
「第一小学校チームですね。では、こちらの用紙にメンバーをご記入下さい」
「わかりました」
受付の案内に、高槻さんが応じる。
別の机に向かい、メンバーを記入した。
三将 茨木優、副将 水無瀬達也、大将 高槻雛と。
「確かに、対戦相手が決まるまでお待ちください」
メンバー表を受け取り、そのことばでしばらく待った。
「たっちゃん、いまのうちにトイレに行っておきなさい」
と、ママの言いつけを守る。ママと妹も一緒だ。
トイレから帰ってくる。ママに水筒を預かる。
対戦の準備だ。
マイクで対戦カードが発表される。
会場に向かう前に3人で円陣を組んだ。
それぞれ右手を中央に突き出し、3つの手を重ねた。
「がんばるぞー」
「「おー!」」
キャプテンの高槻さんの一声に二人が応える。
気合は十分だ。
緒戦はお隣の第二小学校。
それぞれに駒を初期配置に並べる。
並べ終えた後、大将の高槻さんが振り駒をする。
振り駒は自分の歩を5枚取り出し、両手で混ぜ盤上に投げる。
「歩が3枚以上」なら高槻さんが先手、「“と”が3枚以上」なら相手が先手となる。
今回は歩が4枚、“と”が1枚だった。
「私が先手番」
と高槻さんは右手を上げる。
「僕は後手番」
「私は先手」
と僕と茨木さんが続けて右手を上げる。
後の二人は隣の逆の手番となる。
右手を挙げて、更に声を出す。
こうやって先手後手を確認するのだ。
「「「お願いします」」」
あいさつの後、後手番よりチェスクロック(制限時間)をスタートさせる。
後手番で勝負開始だ!
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