エピローグ『少女を殺した男の末路』
「ああ、終わった」
そう呟いた瞬間、自分の視力は失い、今あるはずの光景が魂を抜かれたように遠くなっていく。身体は空気を求めるように必死に動かそうとしているが、俺の心は酷く落ち着いていた。どうせ、この世界に生きていたとしても、何の意味もない。むしろ、国の負担になっているだけだ。働かずに国の金をずっと貪り続けている社会不適合者になっていたはずだ。それならば、いっそのこと死んだほうがいい。いや、死ぬべきなんだ。特に小さなひとりの女の子の命を奪った男は。
そろそろ、息が続かなくなってきた。俺は死後のことを考えていた。きっと地獄行きなのだろう。今まで社会に貢献するようなことは何もしなかった。いつも人に迷惑をかけるか、悲しませるようなことしか出来なかった。こんな人間が天国に向かうはずがなかった。
「うぐっ」
そうして俺は周りが何も見えなくなって、静かに死んでいった。死ぬ間際、俺の頭の中に父の顔が浮かんでいた。彼には本当に申し訳ないことをしてしまった。息子が犯罪者で、しかも幼女を殺害する凶悪が付く犯罪者の父というレッテルが貼られたまま、これからの余生を過ごさなければならない。話のネタを探している記者どもは父の元に集まっていくだろう。犯罪者の親として社会に粛清されて、父の家も身体もボロボロになってしまうだろう。
だから、俺は今さらながらも後悔をしていた。あのときにもっとちゃんと謝っておけばよかった。「これから色々と大変な目に遭うかもしれないけど、決して死なないでくれ」と。きっと父は自分を責めるだろう。そして、最終的に俺という犯罪者を育ててしまった責任を取るために、自殺してしまうだろう。だから、俺は祈ることしか出来なかった。どうか父には死なないでほしい。決して、俺のあとを追う形で死んでほしくない。
ただ、それだけを願うだけだった。