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プロローグ 『信じていたもの』
子供の頃からずっと憧れている人がいた。
それは夕方の30分というわずかの時間しか姿を現さなかった。
悪の組織に脅かされている街を一瞬で明るくさせていた。怪物なんてすぐに倒した。街から笑顔を取り戻していた。だけど、画面の外にあるこの小規模な物語にある不幸を救ってくれることなんてなかった。あのクラスで起こったイジメは続いていた。明らかな悪意に満ちているはずなのに。
いつしか、この世界にヒーローなんて存在しないと思い始めていた。
結局、ある一人以外は誰も救ってくれない。
そのある一人が自分自身であった。