ハロウィン少年
茶色の耳。
フワフワした肉球グローブ。
狼男に扮した彼がいた。
「……可愛い」
私の一言に彼がピクリと反応した。
そして眉間に深いシワを刻む。
あ、機嫌損ねた。
狼男の彼がスタスタと近づいて来て、今度はニコッと笑う。
まずい、と警報を鳴らした瞬間にその手が掴まれ拘束される。
あ、待って、痛い。
ギリギリと締め上げられ骨が悲鳴を上げている。
「Trick yet Treat.」
彼の顔にはあくどい笑顔。
私英語苦手なんだけどと突っ込む暇はない。
ぐるん、と体を反転させられ耳元に息を吹きかけられた。
「うひゃあ?!」
色気のない悲鳴で彼がくつくつと喉を鳴らして笑う。
ひどい。
謝ってお菓子をあげて逃げよう。
そう考えた私だが耳元で彼がそっと囁く。
「まだまだ、始まったばっかりだからな」
逃げられない。
狼に捕食される。