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C地区の陰謀

 近くまで行き話しかけようとしたとき二人がこちらをチラッと向いた。私はすこしギョッとした。瞳には光がなく口だけ何かを隠すように微笑を浮かべていた。

「ディーン君か。無事だったんだね」少し震えが混じった声で彼はそういった。まるで何かをごまかしているかのように。

 普段の彼でないことを見抜いたが大体の理由は察している。

「うん。そうだよ」適当に返事を返しつつチラッと部屋にいた自分達のクラスにはいなかった子達を見るが何やら訳のわからぬことボソボソと言っている。

「あの子達には私らの言葉は通じないよ」グラーフ君がそう言うので耳を少しかしてみると確かに支離滅裂な事を喋っている。

「本当だ」と口から勝手に言葉が出た。「ここの地区の方でもなければA地区でもない…他地区の人だ」フリーク君はゆっくりと唱えるように発声した。

 「他地区」思わず疑問符をつけるような発音で聞き返してしまった。「ああ、…F地区らしい。私達がディーン君の様にここに連れて来られた時にボソッと男が言ったんだ」目を合わせないフリーク君の言葉を頭の中で何回も繰り返し聞かせた。A地区と同じくF地区も占拠されたってことか。このC地区に。いや、正確には強制的に移された…捕らえられたと考えるべきか。

「A地区は」私はボソッと聞いた。二人は少し驚いたような形相でこちらを見た。

「A地区はってディーン君…変な匂いがして具合の悪くなる気体が町中に広がって少しして変なマスクをつけた集団が勝手に部屋の中に入ってきて、トラックに私達を乗せてここまで無理やり連れてきたんじゃないか」とやや早口でフリーク君が言う。そして一秒くらい間を空けて「親は別のトラックにのせて」と力なく付け加えた。

 私は驚いた。そしてその後も話を続けた。どうやらトラック集団は私とフリーク君が子供の頃に脱出を試みた方面から来て、子供だけをトラックに載せ終わると元来た場所へと戻ったという。その時あの白服の変な集団が偉い人を通すかのように道の両脇にピシッと構え立っていたとの事だ。そして…「その先へと行ったの」と夢中になって聞いた。私の頭の中にはここに連れ出される前見た光景が鮮明に思い出される。

 …傾いた石碑のような物。巨大な石のようなもので出来た建物。茶色に錆びた鉄塔のようなもの。今にも倒れそうな石碑。石のような建物の中に白色の箱のような物などだ。思い出すだけであれは何なのかと思う。

「覚えてないの?見ただろあのすごい世界を!」はしゃぐように言うので私は先ほどから頭に浮かんでいた光景を述べると、「そうだよ鉄塔が幾つもたっててそれに線が八本くらい連なってて、大きい建物が沢山あったよな」手振りで受けた衝撃を表した。

「今考えるとあの建物ってビルだよな」とあの写真見ただろと私に伝えてくる。そういえばそうだ。あの石のような建物は写真で見たビルというものだ。


 その時だった扉からカチと音がしてやや乱暴に扉を男があけた。またもや先ほどの男とは違うようだ。何で人がこうも変わるのだろうかと思いつつ再び不安と恐怖に襲われる。二人の顔色も悪くなる。

 「おいA地区のやつだけ来い」と男はこっちを向く。そして他地区の子達にも何か言った。恐らく向こうの言語でおまえらは待機的なことを言われたのだろう。私とグラーフ君とフリーク君だけが部屋外に出された。

 長い廊下を歩く。学意院より立派な廊下を歩く。廊下で色々な人たちとすれ違うが遂に知った人とはすれ違わなかった。男は私達をたまにチラチラと確認しつつ前へ進む。

 そして一つの部屋に入った。ハゲたおじさんがいた。椅子が五つほどあり男は指を刺し「そこに座れ」と指示してきた。やや背の高い椅子に座ると、そのハゲは紙と少し変わったペンを出して名前や年齢などをここに書いて下さいと男とは違って丁寧な言葉遣いで私達に言った。中々良心的なハゲだ。それが終わるとまた男に付いて移動することとなった。 おなかが減ってきた。今度はさっきの一〇倍は歩かされた。途中で階段などもあった。上へ上へと向かって足が痛い。

 

 男が新たな部屋の前に立ち「説明は中のやつから教えてもらえぇ」と相変わらず乱暴な言い方で話すと鍵を開け、私達を押し込むように部屋に入れると再び鍵を閉めた。

 そこにはA地区でよく見る面子が揃っていた。ボヤっとしているのに頭のよいルミア君、積極性の薄いリヴィアム君がいた。他にも10人がいた。皆同じ状況なのだろうか。こういうのは数が多いほど安心する。待っていてのは案の定、歓迎であった

「ディーン君とグラーフ君とフリーク君だ」今更だが三人とも揃いもそろって途中で伸ばすのだなと気づく。

「ところであいつら、ここでどうする気なのかな」フリーク君が誰に対象をしぼったっわけでないが聞く。ルミア君が皆の代表といった感じに答える。

「恐らくここは占領地の人間用の一時的な保留場所だと思うよ」何人かが首を傾げた。ルミア君はわかり易いように説明すると壊れた人形か何かのように顔を見合わせうんうんと頷いた。あの反応は分かったと言う意味だ。

「その後は」再びフリーク君が質問する。

「ここで…ある程度の生活などをした後は肉体労働や兵役義務かそのまま教育か」全員がえっとした顔をした。声を漏らした者もいた。

「兵役義務とか労働とか教育へとかどういう判断で決めるんだよ」遂強い口調で言い放つ。

「1人1人の技能を検査するんだと思う」申し訳無さそうに答えが返ってくる。

「そうか…」力なそうに答え会話が一時中断した。

「そうだ三人ともおなか減ってない」同期のハネヨス・ロヴィビが声をかけてきた。そういうと私は急にお腹が減ってきた。というよりさっきからそうだったんだが。


 ロヴィビが言うにはこの部屋の壁のボタンを押すと飯が出てくるらしい。ただし回数が決まっており1日3回までとなっている。端の三つは誰も使ってないとの事だ。押してみた。

 すると何かガチャガチャと音を立てて壁の向こうで何かが動いているのが分かった。

 少しして壁からお盆のようなものが出てきた。ちょうど引き出しのようなものが出てきたのだ。飯はペースト状のものとクッキーであまりペースト状のものは美味しそうではない。

「…」「…」「…」私と横の二人は先に誰か食べてみないかと目で訴えつつクッキーをかじる。これはおいしい。仕方なく私が最初に食べてみる。以外に美味しかった。私がパクパク食べるのも見ると二人ともそれを口にした。お盆を引き出しのようなものに戻しもう一度ボタンを押すと回収されるようだ。現に回収された。

 

 その後部屋の一通りの設備を紹介してもらったあと疲れていた私は雑に引かれた布団ともいえないような薄っぺらい布の上で寝た。

 次回「C地区の陰謀Ⅱ」更新日1月中旬

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