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遭遇した未知なる世界

次回:邂逅とか書いていたけど気にしないで。ください。

戦慄しきった私の目には何を考えているのかわからない顔が見えていた。それは父以外の何者でもなかったが、明らかに表情がおかしかった。

 怒っているのか、悲しんでいるのかそれさえもわからない。目に光はなく赤々と充血した真ん中には小さく震える黒目があった。口は歪み顔の筋肉はまるで痙攣けいれんを起こしているかのように小刻みに動いていた。

 恐怖心に駆られたが私はとにかく自分自身に襲いかかる苦しみを取り払うことに専念しろという脳の命令により口を開いた。

 しかし何か喋ろうとしたが出る声は小さくまともに聞こえる声ではなかった。さらに喉の奥からは非常に辛いようなよくわからないものがせり上がってきた。口からボタボタと液体が垂れた。胃液だ。


 しかしそんなことは今関係無い。とにかく体の異変を止めないと。悲鳴を上げ止まない体の悲鳴と痛みは収まるどころか激しさを増していく。

「・・く・・こ・・から・・・・だ」何かを親父が言っているが耳の中で声が響くような感覚がし聞こえない。それでも幾度となく聞いてようやく何を言っているのかが分かった。しかし何故こんなことを言っているかがわからなかった。

「早く出るんだ、ここから・・・この地区からだ」この地区からでる?何を言っているんだ。考える力が鈍っている脳内はこの疑問を解くことができなかった。


 尋常ではない異臭が漂う空間で私の体は壊れていっている。それだけわかった。いや、わかっていたつもりだ。実質的に私は何も分かっていなかったのだ。それは私があまりの苦しさに気絶し目覚めた後に分かった。


 目を開く。まず考えたのはここはどこだっけ。という事だ。ぼやけた視界には暗闇が広がっていた。視界がぼやけている中で私は今置かれている状況を把握しようと頭を働かせ始めた。まず最初に私はさっきまで急に体中に異変が起きた事を思い出した。頭や顔を慌てて触ってみるが熱も痛みもない。

 そして親父が部屋入ってきて訳のわからないことを言ったんだ。「この地区から出ろ」と。視界は暗闇に慣れたのか、それとも正常に戻ったか又両方かは分からないが私がいる空間を教えてくれた。

「ここは・・・洞窟?」どこか見覚えるのある場所。暗いところ。道の場所とつながっている場所。目の前にはいつものように鉄格子が・・・ある。はずだ。


 そうあるはずなのだ。しかし鉄格子はそこになく漆黒の闇が広がっていた。私は狼狽した。あれほどのまで私の侵入を防いでいた鉄格子がまるで幻だったたかのように消えていた。いや、幻などではない。私は鉄格子があった穴のふちを触る。粘土細工のように鉄格子だったものが歪み、そしてちぎられている。私が幾度となく岩で破壊を試みても壊れなかったあの鉄格子が・・・。自然災害ではない。あきらかにこの鉄格子を破壊するという明白な意思を持った何かが行った破壊行動だ。

 本来なら他の人を探しにこの穴から出るべきであろう。そう普通はそうするべきだ。だが幼い頃より抱いていた思い。このA地区から出たい。

 それが今あまりにもあっさりと叶ってしまう。私自身を阻害していた者と物は今ここには無い。後は私自身が足を踏み出せば願いが叶う。

 私の体は既に好奇心というものにかられていたからだ。先程まであんなことがあったのを忘れ去ったかのように自分の体は軽やかに前へ前へと進んだ。鉄格子に閉ざされていた空間に突入するも、すぐに景色は変わらず岩肌がむき出しになっている暗い空間を私はゆっくり進んだ。いや最初はゆっくりだったのだがそれは次第に早くなった。どれほど進んだのか足が悲鳴を上げた。だがどういう訳か進むのを私は止めなかった。すると暗闇の向こうに光が差し込んでいるのが見えた。私は駆け足で光が差し込む場所へと向かった。

 視界内に広がる出口。そして出たときまばゆいばかりの光が目にさし入った。あまりの眩さに目を閉じる。

 そしてゆっくりゆっくりと目を空ける。広がる景色を見るために。視界は正常に戻った。

「え・・ぁ・・・」眼前に広がったのは・・・・。傾いた石碑のような物。巨大な石のようなもので出来た建物。茶色に錆びた鉄塔のようなもの。私の何十倍もある。ほとんどが瓦礫と化しているがここは私がいたA地区より文明のレベルが高いのだと分かった。考えるより先に足が動いた。まるで失った何かを取り戻すかの様に。

 ふと学意院で見た写真にあった景色を思い出す。そうだ・・・100年間ずっとここに。ハッとなり空を見る。清々しいくらいの青空だった。雲が2つだけ浮かんでいた。あまりにも不釣合いな光景。荒廃の光景とは反している。

 今にも倒れそうな石碑の横を通り石のような建物に入る。階段があったが壁や天井には亀裂が多々あったため1階にしか入らなかった。A地区には二階がある建物などそうそうありはしないのに。

 ドアがある。取っ手がついている。思いっきり引いてみたがあかない。押してみても開かない。壊れてるのかなっと思って少し乱暴に扱っているとその取っ手が回ることに気づいた。少し回して押して見ると。ガジッと少し歯切れの悪い音がした。扉が開き私を部屋の中に招き入れる。異臭。変な臭いがした。部屋のなかに入り込んでまず机の上に変な箱がたくさんあるのに気づいた。白い箱は不均等な形をしている。おまけに1辺だけ必ず灰色の面があった。おまけにこの箱とセットで言葉が書かれたボタンがたくさんていている板とネズミに見えなくもない物があった。よくわからないが興味を惹かれた。

 ボタンをガチャガチャしてみたりねずみ用な物を机の上で動かしてみた。でも何の変化も起きなかった。

 私はこの時になったようやくA地区の事を思い出した。笑えるほどに綺麗に忘れていたのだ。「戻らないと」建物からすばやく出る。石碑の横を走り抜けて穴に戻ろうとしたが。足の痛みがここで出始めた。ズキっと痛みが走り私はそのまま前に倒れた。

 戻らないといけないという焦燥とこのままでいいやもうという諦観の思考は私の頭の中で対立した。数分後私は眠りについた。

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