変幻
氷魚は、夢うつつで、母と再会を果たす。
新たな覚醒を、目の当たりにして、氷魚は戸惑う。
これから、どうなってしまうのか!?
「顔をあげて、氷魚」
「う…?」
目を開けると、母が、手を差しだしていた。
氷魚は、その手を取って、立ち上がる。
「氷魚、お前は何があっても、生きてくれ、いいね?」
「お、母さん?」
「そう呼んでくれるんだね、こんな…愚かな私でも」
「愚かなんかじゃ…」
言おうとした氷魚を、彼女の母は遮った。
「ありがとう、氷魚…もうじき、夢がきれるようだ、どこかのバカ弟子が、呼びかけているからな、お別れだ」
「お母さん!」
母親は、哀しそうに微笑ってから、氷魚に背を向けた。
景色が、薄れていく。
目の前が霞んで、真っ白になっていく。
突然、強い呼びかけに、彼女の意識は、急速に浮上した。
「氷魚!大丈夫かっ、俺が、分かるか!?」
「わか、る…ごめんね、瑪瑙」
「よかったっ、お前、もう十日も目ぇ覚まさなくてよ、俺…心配で」
「あのね…お母さんに会ったの、あたしに、覚醒めろって言ってた」
「覚醒?もう、とっくに目覚めただろ?」
「剣士として、って言ってた。同じ血が流れているから」
氷魚は、ベッドから体を起こす。
さらり、と髪が流れて、背中を覆った。
「氷魚…」
「なぁに?どうしたの?」
「お前、髪の色…変わった?!」
「え?」
「そこの鏡、見てみろよ!」
「う、うん」
氷魚は、言われて、鏡を覗きこんだ。
「なに…なんなの、この色!?」
それは、赤だった。
以前のような、淡い色ではなく、まるで、血糊を染め付けたような色だ。
「瑪瑙、あたしイヤ…覚醒って、なに!?あたし、そんなの欲しくないっ、望んでないっ」
氷魚は、瑪瑙の背中にしがみつく。
「ああ、いいんだ、望まなくても…お前は、お前のままで」
「瑪瑙ぅぅ〜」