#87
「でさー、その石山コウキくんって子がすっげえいいヤツでさ! 真面目で明るい感じが気に入ったの!」
「へぇ〜、石山コウキくんか。良かったじゃん。いい後輩に出会えて」
「あと高槻千夏って女の子もいたんだけど、この子がまた可愛らしくて元気モリモリって感じだったな!」
「今年も楽しくなりそうね〜♪」
「うん!」
家に帰っておやつを食べながら、俺は母さんやルミと始業式に起きた出来事をしゃべっていた。もちろんかわいい後輩たちだけではなくまゆちゃん先生についての話もしたぞ。
「ただいまーッ」
「父さんお帰りッ」
おっ、父さんだ。父さんが帰ってきたぞ。笑ってっけどちょっとお疲れ気味かな? あ、母さんは美人だけどうちの父さんは普通のお父さんって感じだな。
「おうマサキ、始業式どうだった〜?」
「楽しかった! 新しい先生もめっちゃ美人だったしね!」
「そりゃよかったじゃねえかー。2年に上がったんだし青春もっと楽しんできな」
「そうするーっ」
それから父さんは、荷物を置いて手を洗いに行ってから戻ってきてこう言った。
「ところでマサキ、今年も帰宅部か?」
「う……」
痛いところ突かれました。うん、まだだ。まだ部活なにするか決めてない……。
「もしかしてまだ決めてないってか? 顔にそう書いてあるぞぉ!」
「そ……そ、そんなこと、な、な、ないよ」
「あ! マサキ、今目が右上に泳いだわよ〜。右利きの人がウソをついたときは目が右上に泳ぐって知ってた〜?」
「それは知らなかったー!」
「アニキまだどこに入部するか決まってないんでしょー?」
「う!」
「マサキはわかりやすいから口に出さなくてもわかるのよ。ね〜!」
「ねー☆」
う……く、辛い。まさか家族から精神攻撃を受けようとは。しかもわかりやすいって、悪かったねわかりやすい単純な男で! 複雑なのは好きじゃねえんだもんよ。
「入る予定ないの?」
「多すぎて迷ってんの! スポーツ系か文系か理科系かセカイ系かキハ28系か????系か!」
「最後3つは無いでしょアニキー!?」
「いでっ!」
ルミやめろ! そんなハリセンどっから持ち出した? とにかく、メチャクチャ痛いから今後それで叩くのはやめてくれっ!
「じゃあさ、マサキ。何やるか迷ってるぐらいだったらお前が部を作っちまえばいいんじゃねえか?」
「……え?」
――父さんが発したその一言が俺の中の何かを変えた。
「そっか、そういうことか。入りたい部がないなら作っちゃえばいいんだ……」
「そうだ。お前が今やりたいことをやってやるんだ」
「お母さんもルミも応援してるわよ。ふふふ〜」
よっしゃ。なんかテンション上がってきた。血がたぎってきたぞぅ。風呂に入って、上がったら部屋の中でも考えよう。
「んー、何部がいいかな。何研究会がいいかなぁ。ありがちなやつでいうとマンガ研究会? いや待て。マンガ研究会は既にあったはずだ。ゲームネタも出てくるだろうからゲームも調査・研究の対象に入れるとしたら、ちょっと中二臭くして、極東遊戯結社? いや、極東娯楽結社? カッコいいことにはカッコいいがゲームやらない層もいるだろうしなぁ。やや、だからこそ必要なのか。馴染みやすいように娯楽部なんてどうだろ? 待て待て! トシノー=サンやフナミ=サンの学校と被ってるじゃねえか、バカ野郎。ゲーム部じゃ毎日何かしらのゲームで遊んで過ごす教育上よろしくない活動内容だと勘違いされちまうしなー。むううう〜〜……。あ、そうだ! ここはシンプルにサブカルチャー研究会、略してサブ研で行ってみよう。サブ研で決まり! サブ研ばんざーい!!」
「静かにしろぉおおお!!」
「アイエエエエッ!? ご、ごめんちゃい!!」
ひいっ! 俺としたことが机に向かってひとりで延々喋り続けていた。ルミはオニめいた凄まじい形相でキバをむいて怒っている。これは過去最大級に恥ずかしいことだ。もう! 死ね、死ね! さっきまでの俺死ね〜〜〜〜っ!!