#82
山科エリカです。お姉ちゃんは校医で帰ってくるのが遅いので、私は先におうちへ帰って家事に取り組んでいます。炊飯に洗濯に、お風呂の掃除に晩ごはんの用意に……。まあ料理はお姉ちゃんがしてくれることもあるんだけど、とにかく大忙しです。
「ふーっ、こんなもんかな」
「ただいま〜」
「あっ、お帰りお姉ちゃん!」
「毎日遅くてごめんね〜」
家事を一通り済ませて一息吐いていたら、お姉ちゃんが帰ってきてくれました。うちのお姉ちゃんは山科エリノといって、私より背が高くてスタイルも良くて――。
同級生のマサキくんや氷室くんたちは、そんなお姉ちゃんのことを「男女共通の理想を形にした存在。まさに女神様」と語っています。大げさに聞こえたかも知れませんけど、本当にお姉ちゃんはそのくらい美人なんです。自慢の姉ですよ!
「4月から新入生来るでしょ? 今日ね、そのことでマサキくんたちといろいろしゃべったの!」
「そうだったんだ〜。今年はどんな子が入ってくるんだろう。私も楽しみだわ〜」
「真面目な子か、明るくて優しい子がいいなあ」
「そうね〜。けど真面目な子ばかりじゃなくて面白い人も見てみたいかも」
お姉ちゃん、そんなのんきなこと言ってるけど……。
「えー。私、不真面目な人きらーい」
「うふふっ。もう、そんなこと言わないの!」
「いててててててっ!!」
い、痛い! ほっぺをつねらないで! お姉ちゃん、やめてー!
「エリカだって、あなたはそんなつもりじゃないんだろうけどわたしから見たらいろいろ抜けてるところあるのよ〜」
「そういうお姉ちゃんだっていつものんびりしてるじゃん……」
「お互い様ってことね〜♪」
「あはははははははははっ」
「うふふふふふ〜」
――ぷぅ。丸くおさまって良かったです。新入生、どんな人なのかなあ。お姉ちゃんも私も、そしてみんなも楽しみにして待っています。