#80
「はぁーっ。まったく君ってヤツは友達と勉強会やる約束交わしたことも忘れてゲームの経験値稼ぎに没頭するは、それに夢中で部屋から出てこず親御さんにも迷惑かけるは。ペットボトルにおしっこ入れてないだけまだマシとはいえ、どうしようもないねぇ」
「うるさいよ! そーゆーマサキだって人のこと言えないんじゃないの?」
「俺は君ほど不真面目じゃあないし夜更かしもそうそうやんない! ただし遊園地から帰ってきて遅くなったらやるかもしれないが?」
「わけがわからないよこいつ……」
いきなりレンと口ゲンカしてるけど気にしないでほしい。かくして勉強会始めたわけだけども、レンはすでに宿題を終わらせるまであともう一息という段階まで達していた。ルミの宿題を手伝ってあげられる余裕があるわけだ。
「んー、むずかしい……」
「ルミちゃん、ここはね、こうして……」
「へー、そうなんだ! そういうことだったのね?」
「君のお兄ちゃん多分イジワルして教えてくれなかったんだろうな〜」
む、こいつめ。なんてことを……。
「失礼な! おいレン、俺がいつルミにイジワルしたっていうんだ! そりゃないだろー!!」
「じゃーなんで今日まで宿題手伝ってあげなかったんだよ」
「そりゃあお前、二人っきりで勉強したってつまんないからだ!」
「あたしもそう思う!」
あらー。レンさんったら言葉に詰まったのかなー? なんだか知らねえけど固まっちゃったぞ。
「よしレン変われ、俺が教える」
「ちょっ……」
レンと(半ば無理矢理)交代して、難しそうな顔をしているルミにここはこうするのだとレクチャーする。ある程度教えてからあとは、ルミに任せて行く末を見守ることに決めた。なんでもかんでも手取り足取り教えてたらルミのためになんねーからなあ。
「ここは……」
「レン、もう教えてあげなくていいぞー。ルミ、あとは自分で出来そうかー?」
「うん、だいたいわかったからやってみる!」
「よーし!」
ここまで来たらあとは自分の力でやらせてやろう。そう思って、俺はレンの部屋に置いてあったゲームを借りて遊ばせてもらうことにする。ロールプレイングゲーム、そう――あの国民的RPGだ。ここで遊ばせてもらうためのメモリーカードも持参して準備はばっちしだぜ。では、青春スイッチ・オン!
「っしゃーい! 次の町まで行っちゃるぞぉーい!!」
「ちょ、マサキ! 勝手にゲームやんなって!!」
「わーってる、わーってる! ボスに挑む前にはぐれギンギンやっつけてレベル上げしろってことだろ!?」
「違うってばよー!!」
説明しなければなるまい! はぐれギンギンとはこのゲームに登場するモンスターの一種で、完璧な守備力と速すぎる逃げ足を誇るが倒せば経験値をびっくりするほどたくさんくれるすんばらしいヤツなのだ。同じ種族にギンギンスライムやギンギンキング、プラチナギンギンがいるぞ! また、同じように倒せばたまげるほどのお金を落とすキンキラスライムなんてのもいたりする。とにかく見つけ次第全力で倒すべき相手なのじゃ!
「ルミー、勉強できてるかー?」
「できてるー! アニキこそそんなに必殺技連発してボス戦大丈夫なのー?」
「大丈夫だって、明日のパンツさえあれば!」
「いやパンツ関係ないからこれ!!」
俺は手助けが必要ないと判断したからゲームを、ルミは宿題を、レンはお手伝いを。楽しい勉強会のはずがすっかりフリーダムというかいつもどおりになっちゃって、しっちゃかめっちゃかだ。ま、いいか。
「おやつ持ってきたわよー」
「はーい、ありがとうございまーッす!!」
と、そこで差し入れ引っ提げたレンママ参上。部屋の扉が開いてたから上がってきたレンママはテーブルの上にジュースやおやつを伸せたおぼんを置くと戻っていった。休憩がてらおいらはポーズ画面にしてオレンジジュース飲んで、一服。別にタバコ吸ってねーからな。
「なあレン、ラスボスまであとどんくらいかかるかな?」
「マサキがいまやってる辺りはまだ中盤だからなあ。まだまだかな」
「そっか。ルミもまだ宿題が中盤だったかしら」
「社会と算数終わったー!」
はやっ!! 俺とレンは驚いたあまり凄まじい勢いで、ずっこけちゃった。
「オォウ……も、もう終わらせちゃったのか……」
「うっぷす……」
せっかく企画した勉強会だったのになー。「どうしたの?」なんて怪訝な顔して聞いてきてるけどな、お前がちゃっちゃと宿題終わらせちゃって寂しいに決まってんだろ。お兄ちゃん嬉しいけどくやしいぜ、ちきしょう。




