#8
「ねえねえ、アニキぃー」
「なんだい、ルミ?」
ルミがそう言ってきたのは、ママンが出してくれたおやつを食べてスナックタイムを絶賛満喫中のとき。
暑いよなあ。アイス、食べたいよなあ。
ルミー、あーいーすー。
「るみー、あーいーすー」
「唯ちゃんかっ!」
「そういうお前はターニアちゃんが好きでたまらないランドくんですかぁ?」
『唯ちゃんって誰よ?』と思った方は、ぜひググってみてください。
REPEAT AFTER ME?
「えへへ。ねーねーアニキ、ところでさー、高校って楽しい?」
――楽しいかどうかと聞かれたら。
どうするかは、答えるまでもないだろう。
「あったりめーじゃん! 友達とおしゃべりすると楽しいし、何より宿題も家に遊びに行ったり誘ったりすれば教えてもらえるし。
あと部活も楽しいんじゃねーかな。俺は、帰宅部だけどネ……」
――帰宅部。そう、帰宅部。
俺にとって部活といえば、小学校高学年ン時のイラスト部とコンピューター部、
そして中学からずっとおなじみの帰宅部。
――何だよ、何だよ。そんな白い眼で見ないでくださいよぉー。
俺ァどうせ、文系で運動向きじゃないですよーだ。そんな俺を小ばかにしつつも見守ってくださっている皆様に、
これから帰宅部の素晴らしさについて語ろうと思ふ。おかしかったら、どうぞ笑ってくださいませ。
いいかな、帰宅部とはその名の通り帰宅することがすべての部活。――じゃない、下校して帰宅することそのもの。
それをカッコつけて我々は『帰宅部』と呼んでいるのさ。楽しいんだぜー?
ちょっと大げさかもしれませんけどねー。ガッコからの帰りっていうのはねー、命懸けのエクストリームスポーツなんですよねー。
ですよね、ですよねー。それが楽しいんですよねー。お客様。今ジャ〇ネットっぽく言ってみましたけど、いかがです~?
お分かりいただけましたよね~?
「――ぬぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぅッ!!
なんとか、言ったらどうだああああああああああああああああああああああああぁぁぁッ!!」
「うわ、アニキが……」
「あら、マサキが……」
「突然大声で叫んだ!?」
「そうみたいね~」
「しっかし、ただでさえ小学校の時から冴えないコンピュータ部だったアニキが帰宅部ねぇ……。キャハッ! 超だっさー♪」
「笑うなルミいいいいいいいいいいいいいぃッ!! ……」
俺はもう、ぐうのおt――もとい、ぐうの音も出ません。
だがしかし、妹の罵言に喜んでいるのも事実。
「……ごめんごめん、さっきは取り乱しちゃったな。そういやあ、ルミは部活ナニしてたっけ?」
「むう、ナニよ、そのヤらしい言い方は」
妹が、妹がむすっとしてしまった――。
「ルミ~、最近部活どう~? 吹奏楽部ではうまくいってるのかしら~」
あ、そうだ。確か吹奏楽だったよ、ルミは――。
「母さん、ありがとう!」
「?」
可愛らしい表情で首を傾げて、頭上に『?』マーク。俺のサムズ・アップでどんなレディーもイチコロだ、ブーン。
そして俺も、悪意も毒気もないうっとりとしたタレ目の前にイチコロだミャー。