#77
俺たち二人が映画館で何を見るかは既に決まっている。時間もちゃんと調べてある。俺をちゃらんぽらんだと思ってるやつもいるだろうけど、んなこたァない。俺ね、こういうところはキッチリしてるんだから。そうでないとリア充ごっこの企画なんてそうそう思い付かないよ。
「さあさ、はっじまるよー」
「こういうのを観るのははじめてなので……非常に楽しみです」
「そりゃあいい。きっと気に入ってもらえると思いますよ」
映画が始まる前ってすっげえドキドキするよね? ながーいCMと観賞する上でのマナーと、そして違法ダウンロードの禁止を呼び掛ける映像。それらが終わってようやく始まるんだよね。ちなみに俺が三ノ宮さんと一緒に観に来た映画のタイトルは――『劇場版マスクドライバー 倒せ幻獣軍団!』。正義のヒーロー、マスクドライバー1号とマスクドライバー2号が力を合わせて世界征服を目論む幻獣軍団ミスティックスと戦う映画だ。
「はじまったはじまったー!」
「音楽が熱いわ。ヒーローものらしくていいわね」
「え、こういうのは見たことないって言ってなかった?」
「少し聴いただけですけど、作品の雰囲気が伝わってきましたわ」
オープニングからかっこよく動いているマスクドライバー二人、曲もあいまって非常に熱い! いきなりかっこよすぎるぜ。
「行け、行け、負けるなァ!」
「これって応援するものなんでしょうか?」
「む! そりゃあするべきでしょうよ! 思いっきり熱く!!」
「思いっきり熱く、ですか……」
劇場内はヒーローを応援したりして大興奮。俺たちは熱狂の渦中にいる。ついエキサイトしていた俺は、真剣な表情をして見ていた三ノ宮さんにいきり立って応援を呼びかけて、いや応援することを強いてしまった。そしたら三ノ宮さんは深く息を吸い込んで――。
「1号さん、2号さん、頑張ってぇぇぇぇーーーーッ!」
「どわっ!!」
でっかい声出してドライバー二人を応援したぞ!? 三ノ宮さん、真面目すぎる。何事に対しても真面目すぎるぜっ! だがそれがいい。それが三ノ宮さんの魅力だから。
「行くぞ!」
「覚悟しろ、ブラックバーン!!」
「ダブルドライバーキーック!!」
「ウッ――グオオオオオオオオッ! バカな、この俺が敗れるとは……!!」
二人のドライバーが協力し合い、敵の大ボスであるブラックバーンを相手に同時に必殺技を繰り出す。そして、ブラックバーンを撃破した。そして戦いが終わり世界に平和が訪れた――。
余談だが、ブラックバーンはワイバーンがモチーフで黒っぽくて禍々しい怪人だ。他には、彼の仲間にはベルデグリフィンやヴァイスペガサス、ブルーセイレーンやクリムゾンフェニックスなんてのがいたりする。みんなデザインもかっこいいし強いしで敵役としてはこれ以上ないくらいだ。とくにブルーセイレーンはエロくてよかったな。
「終わりましたね〜。劇場に入る前にあなたが言っていた通り、とっても熱くて面白かったわ!」
「でしょ。あれが日本のヒーローって奴ですよ。世界に誇れますよ! あははははッ!!」
「うふふふふっ」
「そんじゃ、次行こッ」
二人でゲーセンで遊んだり、遊園地で遊んだり、映画を観て盛り上がったり――気付けばごっこ遊びの範疇を越えていた。そう、もはや遊びなんかじゃなかった。最高のクリスマスになったんだ。三ノ宮さん、あなたと二人で遊ぶことが出来て俺は本当に幸せな気分になれた。ありがとう!
神永です!
神戸くんってばひとりだけあぶれて、すごくかわいそうだった。
でもリア充ごっこってそういうルールだったからしょうがないよね。
次回、『暴れた数だけ強くなって、優しさを知ろう』
……うーん、なかなか深い意味があると思うな!