#75
「あ、上がりますよ、上がりますよ、どんどん上がってますよ」
「どこまで上がる? どこまで上がって……うわあああアーッ!!」
「「降りた〜〜〜〜!!」」
俺と三ノ宮さんが最初に行ったのは『なまずのウォータースライダー』ってアトラクションだ。急流滑りで、乗り物はナマズをモチーフにしたものなんだけどスッゴい滑るよ。本ッ当にスッゴい滑るよ! そりゃあもうすんごいからいっぺん乗ってみ、乗れたらな。
「ひゃー! すごかったなあ。次、どこ行く?」
「的を撃つやつで行きましょう。ほら、地図にそういうアトラクションが載ってませんでしたか?」
三ノ宮さんのお言葉を聞いてすぐさま地図を確認。あった、あったぞ。これだな。
「『ライド&シューティングwithレイクサイド』ですね? じゃあ、そこに決まりだ!」
「ええ♪」
さあてお次は的当てだ! 地図によれば場所は北東だ。『ドラゴンライダー』ってジェットコースターの付近だな。ドリンクやハンバーガーが売ってる売店も近くにある。
「よっしゃ命中!」
「撃って撃って、撃ちまくりましょう!」
「だ、ダメだ! そんなやみくもに撃っちゃ!」
「それは承知の上よ! 目指すは……ランキング1位!」
『ライド&シューティングwithレイクサイド』――とは、ボートの形をした乗り物に乗って湖賊のゾンビや半魚人といったモンスターを魔法の銃で撃って得点を稼いでいくアトラクションだ。ただし弱点に当たる部分についている的をちゃんと狙ってから撃たないと得点は得られない。更にターゲットから攻撃を受けてしまうとせっかく稼いだポイントが減らされてしまうので攻撃される前にターゲットを撃たなくてはならない。結構シビアだが楽しいぞぅ。
「あちゃー、俺21位か……結構頑張ったんだけどなあ」
「15位……まだよ。子の程度じゃ納得行かないわ!」
「え!?」
「刃野さん、もう一度参りましょう!」
「しょうがないなー! あと一回だけですよ!」
スコアランキングの結果に納得が行かない三ノ宮さんにせがまれてシューティングに再チャレンジ。二度目は俺が16位、三ノ宮さんは11位。――三ノ宮さんはまだまだやりたそう。本気だ、彼女は本気でランキング1位の座に登り詰めるつもりだ! その執念、表情、姿勢――鬼気迫るものをひしひしと感じたぞ。
「じゅ……11位……」
「やった、1位になったわ!」
三度目の正直でようやく、念願かなって三ノ宮さんはランキング1位となった。たった三回に神経を使いすぎて俺はもうクタクタです。
「い、1位……ですか。おめでとうございます」
「でも一等賞をとったとはいえ、景品は出ないんですね。少し残念ですわ」
「いやぁ、お気になさらず! 景品がどうとかじゃなくて1位を目指すことに意味があるんですから」
「確かに、ここで1位になるためのスコアを叩き出せるだけの努力を他に活かせば自分のためにもなりそうね!」
「はい! じゃあ次行きましょう!」
「ええ!!」
お次は『ライド&シューティングWithレイクサイド』のすぐ近くにあるジェットコースター、その名も『ドラゴンライダー』に乗ってみた。
「え……ちょ、まだ上がるの……?」
「やっぱり、こういうのは緊張しますよね」
「お……俺もです」
ジェットコースターで一番緊張する瞬間――それは急降下する前の急な斜面を登る場面だ。ゆっくり登っていってから急に超速いスピードで下ってくからビックリしちゃうよ。いやホント! ウソだと思うならいっぺん乗ってみな。その代わり、乗り物に酔ってゲロ吐いても知らないぞ!
「おわああああああああああああアーーーーッ!!」
「きゃああああああああああああああああッ!!」
ぶっちゃけ、ウォータースライダーと似たようなもんだけどこっちはそれよりもっと激しい。さっきからずっとアドレナリン出まくっててやべーわ! それも湯水のようにな! これで驚かなかったり叫ばなかったりするヤツがうらやましいよ。
「うわー!」
「わぁぁぁおぉぉぉ……」
仲良くシャウトして、思いきり突き抜けて。そんな感じでエキサイティングな体験をしてきました。そのあとはそうね――怖いけど勇気出して、おばけ屋敷に行ってみた。
「いかにも何か出てきそうな雰囲気ですよね。刃野さんは、おばけ屋敷ははじめて?」
「い、いえ、この前の文化祭の出し物が最初です」
「そういえば、神永さんのクラスがおばけ屋敷をやっていましたね。怖くなかったですか?」
「こ、怖かったです」
「そうでしたか……」
不思議そうな顔をして三ノ宮さんは俺にそれを訊ねてきた。――忘れもしないぞ。あの無駄に気合いの入った無駄のない内装、コウモリの群れ、半魚人、吊るされたガイコツ、そして神永さん扮する不気味な女幽霊……。ああッ! 思い出しただけで背筋が凍っちまいそうだ!
「では、今はどうなんでしょうか?」
「い……今も、怖いです……」
三ノ宮さんが今度は悲しそうな表情を浮かべた。もしかしてだらしないと思われた? それともなんだ……? なんと考えながら歩いていたら、出ちゃいました。それは何かって?
「うらめしやァァァ」
「うわ゛あああああああああああァァァァ!!」
「で……出ましたわああああああああああ!!」
もちろん幽霊なんですけど。このあとはお察しの通り、本場のおばけ屋敷というのはあまりに怖すぎてグロッキーになっちゃったけどなんとか出られた。もうあんなのいやだ……。いやだったらいやだ。