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荒唐無稽ビビッドハイスクール!  作者: SAI-X
第十話『春と秋なんて無い』
59/88

#58

 雨にも負けず風にも負けず。リハーサルにも負けず――様々な困難を乗り越え、遂にこの日が訪れた。体育祭の本番だ。

 この六波羅商業高校の体育祭の競技は、玉入れや大玉ころがし、綱引きや騎馬戦など小中でも取り組んできたものばかり。実のところそんなに苦にはならないんだ。練習は辛かったけどね――。


「位置について!」


 そして俺は今、白い線が引かれたスタート地点で身構えている。今から一年生のクラス対抗バトンリレーが始まろうとしているんだ。俺は先発を任された。

 フライングなんて無礼な真似は出来ない。もちろん俺が遅れればあとの奴らが苦戦する羽目になる。――今日ばっかりはシリアスモードで行かせてもらう!


「よーい、ドン!」


 開始の合図と共に先発の選手たちが全員突っ走る!

 A組からは体力自慢でスポーツ万能な窪寺が、B組からはその窪寺のライバルだという伊坂が、C組からは橘アヤさん、D組からは俺が、E組からは勉強家で知られる夙川くんが先発に出ている。みんな強敵ぞろいだ、負けらんない!


「いいぞ刃野ーッ! そのまま突っ走れ! 窪寺と伊坂を抜けーっ!!」


 長浜先生が叫びながらエールを送ってくれたぞ! そうだ、先生もクラスメートも、父さんや母さんも俺のことを応援してくれているんだ。頑張んなきゃ――。期待に答えなきゃ!


「うおおおおおッ!」

「なんだ!?」

「D組の刃野が急に加速した!?」


 全力疾走だ! 誰よりも早く走ってバトンを渡すんだ! 体力自慢の窪寺も伊坂もビックリ、蔀屋さんと橘さんはもっとビックリ!


「リョウ〜〜ッ!」


 リョウにバトンタッチしたところで燃え尽きたー! あとは事の行く末を見守るだけ。さて、俺の次はリョウが走る番だ。このリレーは先鋒、中堅、大将の順に走ることになっているんだ。D組は俺が先鋒でリョウが中堅、エリカさんが大将という組み合わせになっている。


「氷室くん頑張ってー!」

「ひるむな氷室ォォォ!!」

「おっしゃ、いいぜリョウ! 走れ走れ〜〜ッ!!」


 いつもはクールなリョウだが今日は珍しくホットになっていた。あいつもまた負けるわけにはいかないからだ。

 すべてはクラスの大将であるエリカさんの足を引っ張らないため――。みんなからの熱い声援を受けながらリョウはひたすら突っ走る。悔しいけどカッコいい。でもそこがステキ!



「リョウ、おつかれーー!」

「ん? ああ、どうも」


「お前あんなに走れるなんてなー。驚いたわ」

「へへ、そうだろ〜?」


 ヘトヘトになったリョウを励ます。彼によると、自慢じゃないがそこそこ走れるらしい。そこそこっていうけど――あの瞬発力はただものじゃなかったぞ。


 そして勝負はいよいよラストスパートへ突入――。大将同士のぶつかり合いとなった。C組からはまさかのレン、D組からは我らが学級委員のエリカさん、E組からは敦賀ミカさん――名だたるメンツが勢揃いだ。

 それにしてもレンが大将だなんて誰が想像しただろうか。あいつのしたり顔が目に浮かぶようだ。そして腹が立つ! エリカ、あんな奴に負けるなよっ!


「エリカ、行けッ!」

「そこだエリカさん! 頑張れ、あんたなら行ける!!」


 しかし、なかなかうまくはいかない。周りの連中はみんな早いんだ。陸上部やサッカー部のエースだとかスーパールーキーだとか、運動神経が抜群だったりとか――本当に強敵だらけ。

 この中で唯一エリカと対等なのは帰宅部のレンぐらいか? でも負けてほしくない。頑張れ。走れ。グラウンドの風になれ、エリカ!


「はあっ、はあっ」


 ゴールまであと少し。だが少々遅れ気味――大丈夫なのか? 勝てるのか?


「……負けない……負けたくないのっ!」

「お……おおっ!」

「なんだ……? ゴールを前にしてエリカさんがヒートアップしたぞ!!」


 いらぬ心配であった。なんとエリカはヒートアップし、超スピードで走り出したではないか。ライバルを巻き返し、そのままゴールへ突撃! やったぜ、一等賞! 運動部のエースやスーパールーキーがいる中で1位になれるなんて凄いことだよ。奇跡だよ、いや本当に。



 こうして体育祭は幕を閉じた。その翌日――。



「エリカさーん、バトンリレー1位おめでとう!」

「氷室くん、ありがとう!」

「頑張った甲斐があったってもんだな! おめでとう!」

「マサキくんもありがとう!!」

「本当におめでとう! 同じクラスの人じゃなくてエリカさんのこと応援してたわ!」

「神永さんもありがとう!」


 勝利のお祝いをしようってことで、俺とリョウと神永さんとでエリカの家でちょっとしたパーティーをすることになった。なお、レンは負けたのが相当ショックだったらしく来なかった。分かりやすいのう。


「エリカをお祝いしに来てくれてありがとう♪ みんな、ゆっくりしていってね〜」

「はーい!」


 エリカの隣では、エリノ先生が微笑んでいた。こうして見てみると、このお二方は姉妹そろって美人さんだなぁ。神永さんもきれいだし、おいら幸せだよ。


「しっかし、エリカさんがあんなに速く走れるなんてなぁ。オレもあれにはたまげた」

「うんうん。わたしもそう思う」

「ちっ、ちっ、ちっ……決め手はそれだけじゃないぜ」


 右手の人差し指を立てて揺らして、ちょっとイヤミっぽく言ってみる。一度やってみたかったんだよね。不思議そうにこっちを見るリョウと神永さんへ対して俺はこう答える。


「ゴールテープがあったでしょ? あれに触れるとき――エリカさんの胸が誰よりも先にテープに当たったんだ」

「えっ? エリカさんのおっぱいが……?」

「なんだって? そりゃマジか!?」


 戸惑う二人に俺から「想像してみ」と告げると、二人は腕を組んだり顎に手を当てるなりして考え始めた。やがてなんとなくイメージが沸いたか納得がいった表情で「なるほどね! なんとなくわかったぞ!」「やっぱり胸はあった方がいいよね!」と口々に答えた。その傍らで山科姉妹は不思議そうな顔をしていたが――いや、二人には何も言わないでおこう。


……レンです。


…………ん? キャラ違うって?

いや、そういうわけじゃないんです。負けて悔しいの!

ここで活躍しておかなきゃ面目丸つぶれだったんだ。

そう思って頑張ったんだけど結果は見ての通り……くやしーっ!


えーと……次回、『肉まんとおでんがウマい』!

お楽しみに! もう知らない!

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