#56
もう皆さんご存知かもしれないが、今の季節は秋。スポーツが盛んになったり芸術的だったり、ウマイもんがいっぱい出てきたりととにかく色々あるシーズンだ。そして涼しくなってくるので暑がりの俺にとってはとても嬉しい季節なのだ。
――だが同時に辛い季節でもある。何故なら……運動会とその練習があるからだ。いや、体育祭というべきだったか? 内容はだいたいおんなじだから、まあ良しとしよう。
「っべー……朝からぶっ続けで練習だなんてマジやっべー」
「このシーズンは辛いよねぇ……」
昼休み、俺はいつも通りレンやリョウと一緒に弁当を食べていた。うっめー、マジうっめー。やっぱりお母さんが作るお弁当は絶品すなぁ。
時間の都合でどうしてもすぐに作れる卵焼きとか冷凍食品が多くなりがちなんだけど、たまに昨日の残りが入っててそういう時はちょっと嬉しかったりする。この嬉しさは購買じゃ味わえない。
「練習しなきゃ本番うまくいかないとはいえ、こうも毎日続くとしんどいよなぁ」
「そうだよなー、確かに……それは言えてる」
「おかげで家に帰る頃にはフラフラだぜ」
ため息混じりに語るリョウ。疲れているときは良く寝られるから普通なら嬉しいのだが、リョウみたいに夜中に起きて深夜アニメを見る人間にとっては辛い。
見たかったアニメを寝過ごして見逃してしまう危険性があるからだ。え、俺の場合はどうかって? うーん、土日はともかく平日はそんな遅くまで起きてないからなぁ。ま、楽って言っちゃ楽かな。
「ま、いいんじゃない? 文句言ってても仕方ないし、とりあえず頑張ろうよ」
「え?」
愚痴るリョウを見かねたか、レンがそう呼びかける。いつもチャラい印象のある彼だが、実は親しみやすくて結構いいやつである。レンみたいな明るいやつなら誰とでも友達になれそうだな。
「しんどいのはみんな一緒だし、何より達成感あると思うから」
「レン……お前」
「ま、僕も正直練習ばっかしするのは嫌なんだけどね」
「レンー! たまにいいこと言うと思ったのに、お前なぁ〜〜!」
なんてことだ、騙された! ちょっと腹が立ったので、ポカッ! と軽く一発叩いてやった。「いったぁーい!」と、レンは情けない声を上げた。
「たっだいま〜!」
「あら、マサキ。おかえり〜。早かったわね〜」
帰宅すると母さんがお出迎え。相変わらず優しくてきれいだけど、拝む前にまず手洗いうがいしないとな。手を洗って服も着替えた俺は、おやつを食べようとおやつが入ったカゴを漁る。
「ありゃ? コンソメが入ってない……」
ところがどういうことか、いつか食べようと俺がとっておいたポテチのコンソメ味がなくなっていたではないか! これはいったい――?
「あっ、ごめんね〜。ポテチなら私が食べちゃった」
「えー、そんなぁ! ひどいよ母さん……」
「また買ってあげるから〜」
ちょっとショックだ。食べたかったなぁ――。それにしても勝手に食べちゃうなんてひどいや、まったく。でもかわいいから許す!