#55
「うーん、先生来ないな……」
よっ! オレはマサキの同級生にして友達のひとり、氷室リョウだ。マサキの野郎はオレのことをやれロリコンだのやれペド野郎だのとボロクソ言ってくるが、そんなことないぞ。
貧乳派ではあるが巨乳も好きだ。いかんいかん、話がそれたな。さて、ある日の教室でのことだった。今は休み時間なのでとくにすることもなくペン回しでもして遊んでいると――。
「おーい、リョウー! 今日空いてるかー?」
「げッ! ヒロユキ……」
髪を真っ茶っ茶に染めた如何にもガラが悪そうな男子生徒――寺辺ヒロユキがやってきた。こいつは俺たちとは違う、よそのクラスの生徒だ。
女子に対して露骨に嫌な目線で見たり、校医のエリノ先生(学校でも屈指の美人でスタイル抜群! 自分は貧乳好きだが好きだ!)に対しても嫌らしい目線で見てたりとあまり評判がは良くない。
普段からすげぇ不真面目だし態度も悪いし、オレ自身もこいつのことはあまり好きじゃないな。ご両親の顔が見てみたいよ。
「お前何しに来た。早く帰らないと授業始まっちまうぞ」
「別にいいじゃんよー。もし今日空いてたらさ、放課後ゲーセン行こうぜー。いつもんとこな!」
「はいはい。悪いけど、オレ今忙しいんだ。また今度な」
「ほら行った行った。先生に怒られても知らねえぞ」とオレは頬っぺたを膨らませるヒロユキを追っ払った。だがあいつは立ち去らずにまたやってきて、懲りずにこんなこと言ってきたんだ。
「そんなこと言わずにさ、遊びに行こうぜー!」ってな。まったく図々しいというか、ふてぶてしいというか、なんというか――。
(ホントしつこいな……。こうなりゃ、奥の手だ)
「なあなあ、どうなんだよ! なんとか言ってくれよ!」
「エリカさーん! 授業始まりそうなのにB組のヒロユキが勝手にこっち来て遊んでるー!!」
不真面目な奴にはこうだ! 我が学年の学級委員であるエリカさんを呼んで厳しく叱ってもらう。そしてそいつが別のクラスから来ていたヤツだった場合は追い返す!
どんなにガラが悪くても、どんなに気が強くても彼女にはかないません。そのくらいエリカさんは怖いからなぁ――。
「……ひ、ひぃっ」
「あのー……寺辺さん? 自分が今なにをしているのかは……わかってるよね?」
「わ、わわわわわ分かりません!」
「じゃあ――ちょっと廊下に出ましょうか」
凄い剣幕でエリカさんが寺辺を睨む。あーあ、だから言わんこっちゃない。廊下に出たエリカさんは寺辺をガミガミ叱っていたかと思えばすぐに戻ってきた。なんでも彼女が言うには、授業が始まる寸前だったので手短に済ませて寺辺を追い返したのだという。
「……ふぇ? リョウ、授業まだ?」
――と、そこでさっきまで寝ていたクラスメートのマサキが目を覚ました。こいつ、寝不足だったらしい。だから今日は授業の合間に寝てるみたいなんだ。昨日なにやってたんだ? いつもは寝不足で寝たりなんかしないんだが――。
「おはようさん。もうすぐ始まるぞ」
「まっマジで!? あわわ……な、なぁ」
「ん? どうした」
「さっき外が騒がしかったけどさ、何があったんだ?」
「ああ、実はな……ひそひそ」
「ふんふん、へぇー……。あ、ああ! そうだったんだ! あいつもバカだなー、ハハハ」






