#52
かくして俺たちは別行動をとり、祭りの境内をいろいろと見て回ることとなった。そうと決まったからにはガンガン楽しむぞーい!
「そんじゃー神永さん、どっから行く?」
「うーん、そうねぇ……。綿菓子が食べたいな」
「綿菓子ね、りょーかい!」
俺は今、神永さんとペアを組んで行動中。まっすぐきれいに伸びた黒い長髪に雪のように白い肌、そして藤色の浴衣――。素晴らしい! そして可愛すぎる!
「綿菓子おいしーい♪」
「ホントおいしいよね!」
神永さんがとても嬉しそうに笑う。――なんだろう。よく分からないけど、なんかこう、すっげえぽかぽかしてきた。世の中もっとぽかぽかするべきだよな、うん。しかし俺の目に入ってきたのは神永さんの暖かい微笑みだけではなく……。
(おっ……こっ、これは……)
「……どうしたの、マサキさん?」
(たまらんッッッ)
「あのー……」
これは見とれちゃう。いや、見ないわけがない。だってこんな浮世離れした雰囲気のかわいい子が、おっぱい大きいからって少しはだけていたらどうして目が行っちゃうじゃないか! え、俺だけだった? 俺だけですか、そうですか――無念。胸だけに。
(にひひ! ええのう! かわええのう!)
「もしもーし」
「えっ! あ、いや何でもない! つ、次行こうよ」
「うん!」
それからも俺と神永さんは、しばらく屋台を見て回った。屋台めぐりと遊びこそお祭りの醍醐味。金魚すくいに射的に輪投げ! 昔ながらの伝統ある楽しい遊戯が勢ぞろいだ。
「あっ、マサキくん。今日は神永さんと一緒なんだ」
「うん、まあね。エリカはお姉さんと一緒みたいだな。楽しそうで何より!」
「そういうマサキくんはもっと楽しそうですよ。せっかくのお祭りだから、二人とも楽しんでいってね〜」
「はい! 喜んで!」
見て回る途中で山科姉妹に出会った。二人とも相変わらずきれいだ。エリノ先生もエリカも、浴衣が良く似合っている。誰だ、和服は貧乳じゃなきゃ似合わないって言ったやつは? 出てきんしゃい、巨乳のお嬢さんでも似合うじゃないか。この姉妹を見ればよくわかる!
「お金使いすぎないように気をつけてね〜」
「それじゃあね、マサキくん!」
「二人ともお元気で〜〜っ!」
「また学校でー!」
山科姉妹と別れてからも俺と神永さんはいろんなところを回って祭りを楽しんだ。食べたり遊んだり、リョウやレンと合流したり笑ったり――。本当に楽しいひとときだった。
あ、でも、一番楽しかったのはあれな。花火大会だ。合流してから一番見通しのいいところを探したんだが、これがなかなか見つかんなくてさ。
既に満席だったり後ろの方だったり――。それでも何とかいいところを見つけることが出来た。もう本当に嬉しかった。花火がいちばん前で見られるんだもん。
「花火まだかなー」
はじまる前のことである。柵の上に腕を乗せて全裸で待機――じゃなくて、ほっこりしながら待機。隣には神永さんとアヤさんがいた。二人に挟まれる形だ。
リョウとレンが俺より後ろにいるのが残念だけど、こういうハーレム的なのも悪くない。アヤさん、神永さん、エリカとエリノ先生! みんなは俺の翼だ! ――あ、二対も翼があった。まあいっか
「あ、上がったぞ! みんな見てたか!?」
「見えた見えた!」
「もちろん見てたぜ!」
俺が空に上がった花火を指差してるのを見てリョウとレンが答える。返事を聞けたので二人のことはおいといて、俺は隣にいる浴衣のお嬢さん二人と一緒に花火を見る。
「おおっ、今年はめっちゃきれいだな!」
「たーまやー」
「すごーい……♪」
花火ってのはいいものだ。見てると童心に返って叫びたくなっちゃう――。そのぐらい美しい。
「おっ! 今の花の形してたよ」
「あっ、今度はウサギだ」
「星形も上がったわ!」
花火と一口に言ってもその形や種類は様々だ。花とか星とかスマイリーとか、モ○スターボールとか――どれも形がきれいで見ごたえあり。なかなか良かったぞ。だが一番はやはりスターマインだな。どんなんかっていうと――花火大会見に行ったことがある人ならわかるはず。
「見てみて! スターマインよ!」
「おおっ、ホントだ! スッゲー!!」
「目ぇチカチカしてくらぁ!」
「これこそ花火大会の醍醐味! だね」
「きれい……♪」
スターマインってのは花火大会のシメを飾る連続打ち上げ花火のことだ。当然ながらド派手で迫力があり、毎年これを楽しみにして見に来る人もいるほど。
だからしばらく花火が上がらなくなってもすぐに帰ってはいけないのだ。ま、俺んちはそんなもったいねー事はしないから大丈夫だ。毎年スターマイン見てから帰ってるもんね!
「花火すごかったなァ」
「うん。今年はすごくきれいだったよね」
「俺もそう思う!」
楽しい時間はあっという間。俺はリョウやレン、神永さんやアヤさんと一緒に駅へ向けて歩いていた。ここまでは一緒なんだ。でも乗る電車が違うんだよなぁ。
「マサキくん、今日は楽しかったわ。誘ってくれてありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
「一緒に歩いてくれてありがとう! マサキさんと一緒に遊べて、わたしも楽しかったよ」
「いやぁそれほどでも……エヘヘ」
「それじゃ、また学校で会いましょ」
「ああ。二人ともお元気で!」
アヤさんと神永さんに別れを告げ、俺は先に待っていたリョウやレンのところに行く。やっぱりうらやましそうな、または恨めしそうな目で俺を見ていた。そんな怖い顔で俺を見ないでくれぇ!
「いいよなぁ、最近はお前の方がモテてさ……」
「へ?」
「いや何でもねえよ……爆発しろだなんて思ってねぇからな」
「だいたい女の子にモテすぎなんだよ君は! 美少女と美人ばっかり、もう何人目なのさ」
「んー……覚えてない!」
「はぁ〜〜〜〜ッ!?」
ひがむモテない男が二人。本当に何人女性と知り合ったか覚えてないので、とりあえず言い切ってやった。反省はしている。
さーて、次回の『ビビスク』は?
寺辺です。出番なかったけど次回は出るよ! 多分出るから見逃しちゃやーよ。
それはおいといて、休み明けってキツイよなー。夏休みの次の日は休みボケがひどいことになっちまうから、俺みたいにボケやすいやつは大変だ!
まあいっか! おれたちゃ人間だもん、少しくらいボケたって大丈夫だよな。
えーと、次回! 『春と秋なんて無い』 あながち冗談でもねえような気がすっけど…まあいいや! 次回も見てくれよな!