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荒唐無稽ビビッドハイスクール!  作者: SAI-X
第九話『3Dは目に悪い』
50/88

#49

 夏休みは長い。いや短い。いやいや長い。まる1ヶ月と2週間だからなー。だからといって遊んでばかりもいられない。お手伝いにお勉強、適度な運動と水分補給、あと節電。有意義に過ごさなきゃ意味がない。もちろん俺は、毎年有意義に過ごしているつもりだ。もちろん勉強だってちゃんとやってるぜ。だが、やっぱり――たまには遊びたい!


「……ふぅ。いいとこまで終わったなあ。さて、どうしよっかな〜。アニメ観るかなー。それともゲームしよっかなぁ。あ、いやいや、録画した映画も捨てがたい……って全部インドアじゃねーか! ダメじゃんアウトドアでいかなきゃ!」


 まさかの一人でノリツッコミ。これほどむなしく悲しいこともあるまい。せっかくなんだし外出なきゃ。財布の中身を見て余裕があるかないかを確認し、おいらはサブリュックを肩にかけて一階のリビングへ降りていく。


「アニキー、どこ行くの?」

「ちょっとお外で遊んでくるー! ルミー、何か欲しいものあるかー?」

「ぬいぐるみ取ってきてー」

「ぐふっ! な、なぜ分かった。俺がゲーセンのUFOキャッチャーで遊ぼうとしていることが」

「うーん……女のカン?」


 ルミがいやらしい感じに呟く。この小悪魔めェ……いちいち仕草がかわいすぎるぞ。こうなったらしゃーないな、愛する妹のためにぬいぐるみを取ってきてやるか。でも、取れるかなぁ。UFOキャッチャーって運ゲーなんだよな。物理演算だかなんだかが働いててスゲェ取りづらいの。テクニックとか関係なしに、リアルラックの勝負なの。ラッキーじゃない人はどうやっても取れない。ムキになって交通費までUFOキャッチャーにつぎ込んだら負けさ。みんな、このことをよーく覚えといてね。


「マサキ〜、どこにお出かけするの?」

「ちょっとゲーセン行ってくるー」

「あら、マサキがゲームセンター行くなんて珍しいわねぇ。それで何しに行くの?」

「UFOキャッチャーやってくる! それだけだよ!」

「あらあら。でも、遊びすぎたらお金なくなっちゃうからほどほどにね〜」

「はーい!」


 外に出ると我が家の女神様ことさきこママンが洗濯物を干していた。黒髪ロングとタレ目がたまらんのぅ。エプロン姿もいかにも若奥様って感じでなかなか。あと大きなおっぱい! ちょっとだけおしゃべりしたあと、俺は自転車漕いで近くのゲーセンまで行きました。あ、ちなみにママチャリよ。でなきゃ荷物が乗せらんないから大変。



「よーし、何して遊ぼっかなー」


 ゲーセンに到着。さすが最新のアミューズメントスポットだ! 内装がメチャきれい。電飾もピカピカ。でも省エネ中なのかそこまでピカピカでもなかった。ま、仕方ないよね。辺りを見渡し何か面白そうなものがないか探したけど、とりあえず今はUFOキャッチャーとぬいぐるみだ。お小遣いには余裕がある。サイダーのペットボトルもあるし、準備は万端。さあ、行くぞ!


「おーっ。こりゃあ豪華なラインナップ……」


 壁の付近にそびえ立つUFOキャッチャーの筐体。ガラス越しに中を見てみたら、ぬいぐるみだけでなしに特撮ヒーローのオモチャにプラモも置いてある。これは意欲が高まるな! よし、さっそく遊ぶぞー。百円を投入し、クレーンを右へ。インド人じゃないぞ。


「うっし、これに決めた。これならルミも喜ぶぞー」


 俺が狙いを定めたのは、東洋の龍をモチーフにしたぬいぐるみ。龍といえば神にも等しいありがたーい生き物だ。威厳に溢れた姿をしているが、このぬいぐるみはそれをかわいらしくアレンジしている。それだけでなく細かい部分も凝っていて、遊ぶものの意欲をそそるつくりだ。俺もほしい!


「よーし、そこだ。がっちりつかめよ、離すなよ〜……」


 クレーンが龍のぬいぐるみをキャッチ。昔のゴ○ラのぬいぐるみみたいでかわいいなー。是非とも手に入れたい。さあ、穴までそれを運んでくれ――ってちょっ何やってんだよ! そこで落としてどーすんのよ――どーすんの俺? どーすんの!?


「まだだ! まだカネはある!」


 しかし俺はあきらめない。落とすたび金をつぎ込み何度もチャレンジしたが、なかなか取れず――。


「すねえええええく!! まだだ! まだ終わってない!!」


 俺の怒りはついに爆発炎上した。だが、怒ったところでどうにもならぬ。運がすべてを左右する。だから運が悪いと全然とれないのだ。悔しいけれど、事実である。


「く、くそ……」


 財布を確認したところ、残っていたのは帰りの交通費のみ。もちろんこれ以上は使えない。あきらめて帰るしか、と思ったとき――。地面に着きそうなながーい髪をなびかせた、きれいな女の子がそこに現れた。


「マサキさーん、どうしたの?」

「か、か、か、かっ神永さん!? どうしてここに!?」

「宿題がはかどらないからね、ちょっと気分転換に来てみたの。結構楽しいよね〜」


 彼女は神永さん。俺やリョウとは違うクラスにいる女子だ。とにかく髪が長く、前髪も長めなので片目が隠れちゃうんだとか。


「へぇ、そうなの……神永さんってこういうところあんまり行かないイメージがあったけどなぁ」


「ううん、そうでもないよー。友達とよく一緒に遊ぶから」

「そうなんだ」

「ところでマサキさんは何してたの?」

「え、俺? 俺はねー……んー。ここでぬいぐるみをキャッチするのに必死になってた」

「なかなかキャッチできないよねー」


 もう一回ぐらいチャレンジしたいが、残念ながらお金はない。神永さんとしばらくしゃべったあと、俺は引き返すことにしたが――そこに鶴の一声が!


「……いま、お金ないんだよね?」

「うん、もう帰りの交通費しかないんだ」

「じゃあさ、こういうときは――店員さんに言ってみたら?」

「え?」

「店員さんに言えば出してもらえるかもしれないわよ」

「……それだ!」


 その発想はなかった……。神永さん、あったまいー!


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