#46
「終わったなぁ〜終了式!」
「高校でも校長先生の話って長いんだなー」
このいかにも不真面目そうな二人が言っている終了式とは――、学校全般において学期を終えるために行われる催しのことである。
厳密にはちょっと違うんだが、だいたいはそんな感じだ。この終了式が一年の中で最初に行われるのは7月の夏真っ盛りだ。
体育館の中か或いはグラウンドで行われるのだが、どちらも――暑い! グラウンドは炎天下だし、体育館にゃクーラーついてないしで大変なのだ。
そんな中で校長先生のありがたいような、どうでもいいような長ったらしいスピーチを聞かされるのはたまったもんではない。
だが、嫌なことばかりでもないぞ。なぜそうなのかは皆さんならお分かりいただけるはず。終了式の次に来る大イベントといえば……?
「はーっ! やっとだね、夏休み!」
そう、夏休みだ! 夏休みとは言うまでもなく、7月後半から8月ぜんぶまで、長期に渡る大型連休のことである。これが待ち遠しくて仕方なかったんだよ。
「うんうん! しかも高校に入ってからはじめてだしな!」
「何して遊ぼーか? プールにTVゲームに、それからアニメ……いろいろあって迷っちゃうね」
下駄箱でこんなことを話し合っていた俺とレンだったが、そこにクラスの学級委員であるエリカがやってきた。ちなみにレンはエリカとは違うクラスだ。俺はエリカと同じクラスだけどな。
「こらーっ! ちゃんと勉強もしなきゃダメよー!」
「え、エリカ!? 聞いてたのか……ご、ごめんなさいでしたぁーっ!!」
「べ、べべ勉強します! しますから許してぇ!」
彼女は不真面目な輩が大嫌いだ。とくに勉強してなさそうなヤツに対しては厳しいのだ。俺はそんなに怒られたことはないので、彼女に嫌われるタイプじゃない……と信じたい。
「へぇ、アニキ今日から夏休みなんだ」
「ああ!」
「いいなぁ。あたし、終了式が来週なんだよねぇ……」
「フフン。うらやましいだろうそうだろう」
家に帰った俺は、のんきにアイスを食べながら夏休みと終了式について話し合っていた。ルミの悔しがる顔もまた――カワイイ。
まったくカワイイ妹を持ってしまったものだ。ママンは美人で巨乳だし、親戚のしずか姉さんも美人でナイスバディだし。
俺ってもしかして、至れり尽くせりじゃないか? こういうのをリア充って呼ぶんだろうな。ってことは――俺は近いうちに爆発させられる運命なのか!? そんなの嫌だ――――っ
「だがルミよ! おまえなら分かっていると思うが、夏休みだからって遊んでばかりではいかん! 勉強と宿題、そしてお手伝い! これらをすべてこなして有意義な夏休みを過ごさなきゃな」
「でもアニキの夏休みって遊んでばっかりじゃん。勉強してるとこ見たことないよ」
「そ、それは誤解だよ。ちゃんとやってるぞー」
「うっそだぁ。パソコンとゲームばっかやってるくせに」
「うっぐ!」
「それにアニキって一夜漬けするタイプでしょー? あたし、お母さんからそう聞いたよ」
「ぶべらぁぁぁぁ!!」
はいダウト! ルミに論破されてしまった。確かに俺は遊んでいることが多いが、勉強だってちゃんとしているさ。
ルミの見てないところでやってたり、友達の家まで行って宿題やってもらったりしてっけどな――はわわ。
騒ぐ俺と笑うルミのもとに、ママンがお茶をもってやってきた。みんな、水分補給は欠かさずになぁ。とくに夏場は危険だぜぃ
「……あら、マサキもルミもどうしたの? そんなに大きな声出しちゃって」
「い、いやさ……ルミと夏休みについて話し合ってたんだけど、ルミがいきなりビックリするよーなこと言ってきて」
「えー? アニキが一夜漬けするタイプっていうのが一番ビックリしたけど」
「受験は一夜漬けして夏休みの宿題は友達に全部押し付けて……お父さんはそういうタイプだったらしいけど、マサキはちゃんと勉強するタイプだから大丈夫ね〜」
なんだと、俺の父さんはそういうタイプだったのか! まったく度しがたいな……。いや、一夜漬けが悪いとは思わんよ。ただ、夏休みの宿題を友達に押し付けてやってもらうっちゅうのはちょっとな――、ダメってレベルじゃねえぞ!
その頃、父さんはというと
「へっくしょい! 誰かわしの噂したか……」
「いや、してませんよー」
「そうか……じゃ、いいや」
職場でくしゃみしていたらしい。
マサキです。
……暑い! 暑すぎる!
予告なんかやってらんねー、俺は部屋でクーラー入れてねる!
次回、『3Dは目に悪い』お楽しみにッ! あーもう、暑すぎ!