#42
「エリカぁ〜」
「なあに? 橘さん」
たのしい六波羅商業高校での毎日ですが、最近気になることがあります。それはとっても些細なことなんですが――。
「あたし……その、なんていうか……」
「どうしたの?」
「エリカのことが好きっ!」
今日、橘さんから突然そう言われたときは、身体中に衝撃が走りました。私はそのとき唖然としていました。これって恋の告白だったのかな、それとも友達としての『好き』だったのかなぁ――。どう解釈したらいいのか、まったく分かりませんでした。橘さん自身はどういう意味合いを込めてそう言ったのかな――。
「へぇー。そんなことがあったのねぇ」
「そうなのよ〜。お姉ちゃんはどう思う?」
家に帰ってからも気になって仕方がなかったので、思いきってお姉ちゃんに相談してみました。わたしより人生経験が豊富なお姉ちゃんなら、なにかいい答えを出してくれるかもしれなかったからです。
「う〜ん」
お姉ちゃんは最初にちょっとだけ悩んでいる表情を浮かべていて、少し気まずくなりました。でもすぐに、にっこりと笑ってくれて嬉しかったです。
「世の中には同性愛っていうのもあるからね〜」
「……同性愛って?」
「同じ性別の人同士で愛し合うことよ〜。男の子なら男の子同士で、女の子なら女の子同士で……みたいな感じかなぁ」
同じ性別同士で愛し合うってことは――、橘さんはあのとき……!?
「……お姉ちゃん」
「なあに?」
「わたし、告白されちゃったかもしれない」
そう言われてお姉ちゃんはビックリしました。無理もありませんよね、「告白された」なんて言っちゃったもの。
「う〜ん、でも……友達としての『好き』だったかもしれないわね」
「気になるよね。あたしもその辺が気がかりだったの」
「明日橘さんにそのことを聞いてみたら〜? 言葉だけじゃ本当の意味が伝わらないこともあるから」
「うん、そうする!」
どうやらお姉ちゃんも同じことを考えていたみたいです。決心がついたので、明日橘さんに真相を聞いてみたいと思います。
「ねえ、橘さん。昨日わたしのことを好きって言ってくれたよね。あれってどういう意味だったのか教えてもらえない?」
――翌日、休み時間に橘さんに会いに行ってみました。そして聞いてみました、先日言われたことの意味を。そしたら橘さんはこう答えたのです。
「えっ、昨日の? あ、いや……その、とくに深い意味はないよ!」
――やっぱり私の考えすぎだったのかしら。橘さんもとくに私に気があったとか私にホレたとか、そういうのじゃなかったみたいです。これでひと安心――って一口に言っちゃって良かったのかなぁ。