#29
第六話『夏といえば』
アホほど眠たい土日の朝。たとえ休日でも、この小うるさいアラームは容赦なく騒ぎ出す。うるさくて寝られません。
「うるせえなあ〜……ふぇ? まだ7時じゃねーか。寝よ寝よ」
うざったいことに、この騒々しいアラームにはスヌーズ機能がついていた。何分かおきにセッティングし、アラームが止まっていた場合またアラームを鳴らす優れものだ。しかしながら、この時ばかりは自分のマジメさを呪ったぞ! うっさくてまともに眠れやしない。
「また鳴ってる。寝させろよぅ……」
こっくり、こっくり。何度めなのか覚えちゃいないが、静かにすやすやと寝息を立てる。昨日遅かったからなぁ。じっくりゆっくり、焦らずゆとりを持って寝ちゃおう。寝ちゃおう。寝ちゃおうーっ!
「起きて、お兄ちゃん!」
「ハッ!? その声は……る、ルミ……なのか?」
ゆめかまぼろしか? ねぼすけなお兄ちゃんを起こしにきたのは、お尻の下まで届きそうなくらい綺麗にまっすぐ髪を伸ばした、茶髪のロングヘアーの少女だった。瞳はツリ目の琥珀色。かわいいな。そして、誰かに似ている気がするぞ。エリカかな? でも、エリカはそんなに目はつり上がってない。第一あの子はアイカラー緑色だし――じゃあ、どちら様? いつも夢の世界からお呼びにやってくる睡魔たんは、髪色がグラデーション効いててもうちょいにぎやかな感じだしなあ。本当に誰なんだろう。でもまあ、いいや。この子俺好みだし、こんなにかわいい妹を持てて幸せだあ!
「……アニキ、起きて!」
「あ、兄貴ィ!? バカちん、お兄ちゃんって呼びなさい。お兄ちゃん……って、アレ!?」
「何よ、どうかしたの? もう10時前だよ!」
「うっそーん、そういうことか……」
「つべこべ言わない!」
何故か、すこぶる機嫌の悪そうなルミに連れられ1Fへ。朝からカンカンに怒られると、堪えるなあ……。