#26
「今日の授業難しかったよなー」
「ホント、ホント。先生もたまには簡単な問題出してほしいよなー」
「なあ、今日の帰りゲーセン寄ろうぜ」
「いいねー、賛成!」
「そこっ! 聞こえてるわよ!」
「ひえぇ! ごめんなさいッ!」
最近、休み時間に先生の愚痴をこぼす方の多いこと――。正直許せません。二年生だからまだいいだなんてよく聞きますが――来年からもう、三年生ではないの? 下級生の方々の大先輩になろうというのに、そんな調子でどうするのかしら。
「あのさー、三ノ宮さん。あんまり注意しすぎると煙たがられちゃうよ……」
「みんな上級生としての自覚がなさすぎるわ。来年からしっかりしなきゃいけないのに」
「あんまりうるさく言うのもどうかと……」
「だからってちゃんとしないままでは、我が校のイメージダウンや成績の低下につながります。時には、諌めることも必要だと思うわ」
「ごめんなさい……ボクが悪うござんした」
みんなが私のやり方を受け入れてくれるかは分かりません。ですが、わたくしは次期生徒会長候補に選ばれた身。今よりもっとしっかりしなければ、それは務まりません。
「うんうん。その通りだ。最上級生になるからには、しっかりしなきゃいかん。そうでしょ、ユカさん!」
「はい、一緒にがんばりましょう。朝霧さん!」
彼、マナブさんとは考えを共にする同志です。そうそう、わたくしは三ノ宮ユカと申します。武家を祖先にもつ家系に生まれでして、周りのみんなが言うにはいわゆる『お嬢様』というものらしいですの。世間知らず故まだまだ知らないものもたくさんありますが、どうかよろしくお願い致します。
「なんでこんなガラの悪いヤツと仲良くしてるんだ? まずはこいつ更正させろよ……」
「朝霧さんになんてことを!」
「ご、ごめんなさい!」
彼は、尼ヶ崎翔伍。ちょっと嫌味で口の悪い方なの。人のことにばかり口を出して、自分には甘くするなんてとんでもない。しかも、先生に何度注意されてもまったく懲りないのよ。ひどいと思いませんか? 彼は一度自分を見つめ直して、反省した方がいいと思います。
「ケンカはもうやめたけど、次は何をどうすりゃいいんだろう?」
「ケンカしない、夜の12時までゲームを遊ばない、夜更かししない、ナンパしない、R指定の画像やサイトは見ない、むやみに保健室にいかない。あなたの場合、以上のことを守っていただければよろしいのでは」
「……きびしーっ!」