#25
「昨日の帰り、二人で一緒に帰ったんだってな。それで、立ちついでにどちらかの家に寄ったとか聞いているが……待てよ。もしかして……、ふっふっふ。俺の見込みでは、あの二人は付き合ってるな。間ぁ違いない」
「マサキくーん。それって、誰と誰の話なのー?」
「わわっ! な、なんでもないでっす」
彼女は聞いていた、の巻。うっかり口に出してしまったぞ。こんな妄想全壊なトーク、人に聞かれて恥ずかしくないわけがなかろう。友達でも恥ずかしいわいっ!
「あはは! お前やっちまったなぁ。はずかしーっ!」
「うっさいバーカ!」
むかっ腹が立ったので、とりあえず罵って唾を飛ばしてやる。リョウのイケメンも台無しというもんだ。
「わ、悪かったよ。それで、なんでお前はさっきあんなにパニクってたわけよ? よっぽどマズイ発言しちまったのか?」
「……百合だよ」
「あんだって? 百合……?」
そう言った瞬間に、リョウは何やら申し訳なさそうに後ろへ下がる。震えながら。また、マズイこと言っちゃったんだろうか。
「リョウ?」
「同志よ! オレも百合が好きだ。いやぁ、アレほど萌えレベルの高いものはないよなぁ。少なくとも、オレは百合以上の萌え要素に会ったことはないぞ」
「……ぁー……」
どうやら、事態は俺が思っていた以上に深刻だったようだ。まさか、まともだと思っていたリョウが、ここまでハマっていたとは。反応に困るってレベルじゃねーぞ!
「あ、でも、それってお花の百合だよね? アレって花粉にやばい成分含まれてるらしいから、あまり近寄らない方が……」
「何言ってんだ。お前知ってるくせに知らんぷりか? 百合といやあ、ガールズ・ラブの隠語……」
「ストぉーーーーップッッッッ!!! その発言をインタラプト!」
あらゆる手段を使い、相手の行動を何が何でも中止させる禁じ手。それがインタラプトだ。ただし、1シーンに一度だけしか使えない。要するに1日一回、だな。と、ゲームの技っぽく、大げさに解説してみる。実際はただのお口にチャックよん。
「はいはい、暴走特急はここで停車〜。クールな氷室くんに戻りなさーい」
「ん? なんだか、立場が逆転してたような……」
「え? さっきおもっきし暴走してたじゃん。覚えてない?」
「えーっと。うーんと。あーっ……と……思い出せねーや」
なんということだ。こいつ、スイッチ入ったときの記憶がなくなってる? リョウとは高校入ってからの短いつきあいではあるが、こうやってまだまだ多いであろうこいつの変な部分を知っていくことになるんだろうなぁ。ちょっと、勘弁してほしいなぁ。――と、マサキは心の中で考えています。
「よし、ここなら誰もいないな。いいか? 一回しか言わないからよーく聞いといて。ゴニョゴニョ……」
もったいぶってから耳打ち。どうじゃ。まあ、さすがにあまりやるよーなことではないよな。ギャグでやるなら、ありかも分からんけど。
「!? え、エリカとアヤが付き合ってるって!? それは本当か!?」
「しーっ、声が大きいぞ!」
廊下のスミッコ、しかも男二人でナイショ話。我ながら、なかなかシュールな光景だなぁ。これこそ見られたり、聞かれたりでもしたら恥ずかしいぞ。そりゃあ、顔から火が出るくらいには。
「ふたりはレズか……ガチではなさそうだが、ありだな。うん」
「言いたいことはこんだけじゃ。教室もどるぞ!」