#23
第五話『時計じかけのみかん』
「むーん……」
「どうした、リョウ君?らしくないぞー」
ある日のことだ。ちょいとA-squareのアニ○イトに行ってみたのだが、実ははじめてだったのよ。ここってずっとアニソン鳴りっぱなしなのな。ものっそいうるさい。生まれつき、うるさいのがあまり好きじゃない俺としては少々気が滅入ってしまう場所だ。そんな場所へ俺は連れてこられたってハナシなのよ。無理矢理ってわけじゃないけどね。そして本を買いたいというリョウ君に付き合ってあげているっちゅーわけよ。
「なに迷ってんだよー、決めるんなら早く決めちゃいなよ」
ちょっとせかしてみよう。リョウのやつったら、慌てて目ぼしいものがないか探し始めたぞ?
「これか? それか? いや違う、俺が欲しいのはこんなんじゃない……くそっ! ここも売り切れか」
「あー、もしもし。リョウ? 迷ったら買わない方がいいんだぜ。俺たちゃ、庶民だし。迷った挙句買っちゃうのはお金持ちがするこった」
おじいちゃんが言っていた――。
『迷ったらものを買わない方がいい。迷った挙句に買ってしまうのは、金持ちがやることだ。』
――うーん! これぞまさに名言、だなぁ。俺もおじいちゃんの言ったとおりにしているつもりだ。
「欲しいもん見つかんなかったんだろー? 大丈夫だ、問題ないって。いつも地元の本屋で妥協してる俺にとっちゃ、目当ての本が見つかんないなんてよくあることだしサ。遅くなっちゃうからもう帰ろうぜ? な?」
「うっさい! 俺はお前とは違う。なんか買って帰らなきゃ気がすまん。そんなに帰りたいなら一人で帰ってくんね? けどさ、お前ココ来んのはじめてなんだろ? だったらそれこそ、何もなしで帰ったらダメなんじゃね?」
あっ、気にかけてくれた。
しかし、そんな意外と優しいリョウ君にゃ悪いが、俺は……
「えっ、おみやげなら買ったぜ?」
既に買ってあったのだ、おみやげを人知れずに!
リョウが迷いに迷い、gdgdになっている間にね。
「お前いつの間にッ!?」