#21
「エリノせんせーっ!」
「あらぁ、マサキくん。ご用件は何ですか?」
ぴゃあ、相変わらずエリノ先生はキレイじゃのう。
おっぱいも大きくて、何よりただならぬ母性を感じる!
この人は現代のマザーテレサと呼ばれるにふさわしい!
「あ、あの、その、朝霧学って人来てませんか?」
「2年の朝霧さんかしら。まだ来てないよー」
そう聞いてホッと一息。ついていたのだが――
「失礼しまーす。エリノ先生、荷物運んでたら足くじいちゃって……むむっ!?」
「むむむ!?」
なんか怖そな人キター!?
でもカッコいいルックスで、いわゆる『ちょいワル』系のイケメンだね。もしやこの人が噂の朝霧さんかな。
だが、それとこれとは話は別だ。俺のエンジェル――エリノ先生に近づくやつはムッ殺す!!
「誰だお前!?」
「あんたが噂に聞く朝霧さんか!?」
なんてこった。お互い指差しあったと思ったら、いつの間にかケンカになりそうだぞ。
オイラ、ケンカは苦手なんだけどなあ。
「まさかと思いますけど俺のエンジェルたるエリノ先生を傷物にしようって考えてませんよねェ? 先輩ッ!」
「そういうお前こそエリノ先生をヤろうとか考えちゃいねえだろうな? どこの馬の骨かは知らねーがよ!」
そしてにらみ合いに発展する!
いろいろとヤバイ、こいつはヤバイバ! しかもエリノ先生の目の前だし。
まあ大変、どうしましょう。できれば話し合いで解決したいけど。
「け、ケンカはやめてください。やるなら外でして下さい!」
ああっ、エリノ先生に怒られてしまった。
「ご、ご、ごめんなさい! 元はといえば僕がこの人にケンカを売ったばかりに……」
「す、すみませんでしたッ! そもそもは俺が彼にメンチ切ったせいで……」
やや?
どうしたことだろう。反省の言葉が同時に飛び出たぞ。
俺もこのちょいワル兄さんも、エリノ先生が好きだってことに変わりはないんだな。
その後、お互いすぐに謝った。
「二人とも、殴り合いはダメよ~」
エリノ先生はそれを笑顔で赦してくれた。無論、女神の微笑みだ!
嬉しいという気持ちが俺と朝霧さんの体に吸い込まれていくようだったよ。
「俺、1年の刃野って言います。同志として今後とぞよろしくお願い致します!」
「おう、刃野っていうか。じゃあお互いよろしくな。後輩!」
こうして俺と朝霧マナブ先輩は手を取り合い、エリノ先生に思いを寄せる同志となったのであった。
あれ、この前も同じように和解したやつがいたな。誰だっけ?
まあいいや。
無理に思い出さないほうが自分の為だもんな。
―よくじつ!―
「チョココロネはどこから食べたらいいんだろうね。穴が大きい方か? それともしっぽの方かな?」
ここで俺をバカだと嘲るのは早計というヤツですよ、みぃなすわぁん。
かの伝説の少女Aもこうやって真剣に悩んでいたはず。
端からみればアホ臭く見えるだろう。けどね、これでも考察してんのよ。
どうか分かってちょんまげ。
「そんなこと知らないよー。それはおいといて、みんな知ってるか?」
おや、柄にもなくうん蓄を喋る気だな。どーぞご勝手に。
俺は食べ方の考察でもしておこう。
「一時期立命館大学の投書に『チョココロネが買えない』という旨の書き込みがあったそうだよ。アレだね、ラッキースt」
「しかしマサキくんはそこでレン君の口にチャックをするッ!」
うっかり危ないところまで言いかけたレンの口を封じ、再びチョココロネを噛みしめる俺。
ふがふがうるさいが、全力でスルーさせていただく!
なぜ友達をスルーするかって? いちいちかまっていたら、せっかくのディナーが楽しめないじゃなイカ。たったそれだけでゲソ。
「マサキー、おまえ今日チョココロネしか昼メシねーの?」
リョウが冷笑しながらこっちを見てきた。
少しムカついたので、置いていたビニール袋の中身を見せびらかしてやるとすぐにきょとんとした目になった。
「なワケねーだろ!?」
「こいつぅ~……あんまり人をおちょくっえtるとぶっ飛ばすぞ!!」
「ひっで! 俺、エリカと一緒にランチタイムしてくる! じゃあな」
「お、おい、マサキ!? 冗談だったのにぃー!」
今更言っても遅いわ!
俺は麗しの学級委員様とご一緒する。すると言った!