#10
「そういうマサキくんはおうちへ帰って何してたのかな?」
「ぐぬぬ……」
くそぅ、レンのやつ。人を食ったような顔しやがって。
棒読み止めた途端にこれだよ!
「ったく、しゃあねェなァ。これだから知りたがり屋さんは……」
なんかムカッ腹が立つので適当に、しかし分かりやすく三行にまとめて帰宅後の出来事を話した。
「はぁー、なるほどね。ルミちゃんだっけ? いいよね、マサキんちは妹さんいて」
「君もお姉さんは大切にしなよ?」
「ふふん、分かってますよ~」
ハッ、何を今更――。
ルミはかわいいからね。
これほどルミのお兄ちゃんとして生まれてきてよかった、と思ったことはないぜ。
「そういやルミちゃんの顔見てねーや。今度行っていいよな?」
「あ、そういやリョウはまだ見てなかったね。ルミたんの顔とか」
「かわいいのか?」
「うん、とってm」
「あったりめーだろうがァ、バカヤローこんにゃろーめェ!
ルミは天使のごときかわいさだ! マジ天使だもん! 今でこそツンだが、じきにデレる!
トゲがとれて素直になれば、大天使に昇格するぞぉ!」
なんという名演説――
これで俺に惚れたお嬢様、お姉さま方は今すぐ俺に愛の告白を!
――ただし、野郎は来るな。
俺はBLは嫌いなんだよ!! 百合はオッケーだけど。
俺はな、BLなんぞに興味はねぇ。
お姫様に恋して無双したいんだよ!
「――まあ、自慢話はおいといてだ。リョウよ、あまりゲーセンでお金使うなよ~?」
「む……」
「親御さんも心配するぜ~」
「わ、分かった。肝に銘じて、今後は自重する」
「キリッが抜けてるぞォー」
「やかましいッ!」
――放課後――
授業も終わり頭が冷えた頃、俺はある事を思い出した。
集金袋を持ってきてはいたが、それを渡し損ねていたことだ。
「やっべ、エリカ怒ってないかなぁ――;」
心配になってメールしたところ、今生徒会執行部の用事が終わったんだと。
下駄箱でエリカが降りてくるのを、俺は待つ事にした。
「まーだーかーなー……」
と、俺が思っていた矢先にエリカがやってきた。
「って、おおッ! エリカ様きたーッ! これで勝てる!!」
「マサキくーん、待たせてごめんね~」
「いやいや、いいんだエリカ。朝早くに渡さなかった俺が悪いんだし……」
「はい、これだったよな」
すかさず集金袋を取り出し、渡す。
「ありがと~♪」
わお! エリカたん大喜びだっぜ。
「ハハッ、今日も一段と笑顔が素敵だなぁ。お姉さんに似てきたんじゃね?」
「えーっ、まだまだお姉ちゃんにはかなわないよぉ」
「ハハハ、ウブなエリカちゃんもかあいいのうw」
これぞ微笑みの爆弾か――。みんな、俺は今天使にふれたよ!
山科姉妹は、二人揃って天使のような笑顔を持つ。
彼女らの健気で穏やかな笑みを見ると、自然とやましい心は浄化されるのだ。
さあ、君もウォッシュせよ!
心の中の世界のゆがみを、駆逐するのだ。
「今回のお金を何に使うか、楽しみにしててね♪」
「うん! というかもう待ちきれないぜ!」
やだ、もうたまんね
結婚しちまおうかな! でもまだ、婿として修行が足りないしなぁ――。
えっと、こんにちは。いや、こんばんはだったかなぁ……。
山科エリカです。あたしにはエリノっていう保険医のお姉ちゃんがいるんですけど、
すごく美人で優しいの♪ そんなお姉ちゃんに恋してる人がいるみたいなんだけど……
でもお姉ちゃん鈍感だからなあ、気付いてもらえるといいんだけどね~。
次回、『とある高校の保険医』! お楽しみに♪