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 神様が立ち去ってから、新刊コーナーを整えた。本の位置を揃えながら、やっぱり胸騒ぎがした。背中がぞわぞわして、不安と恐怖が入り混じる感情。それがどこに対してのものなのかが分からなくて、私は早々に司書カウンターに戻った。


「お疲れさん」


 司書カウンターの椅子に腰かけ、視線を上げる。そこには、レンが音もなくぼんやりと立っていた。


「レン。お疲れさま」

「ありがとう」

 

 そう言ったレンは、いつもより疲れているように見えた。淡い水色の衣が、どこか重たそうに揺れている。口調もどこかしんみりとしていた。


「仕事は?」

「……終わったよ」


 言葉に、間があった。

 レンは私に近づこうとして、ほんの一瞬ためらった。そのためらいが何なのか考えることもなく、レンは私の頭にぽんと手を置いた。

 あたたくて、大きな手。けれど、そのぬくもりになぜか違和感を覚える。他の神様の言動が不可思議だったのと同じように、レンの言動にも疑問を持ってしまったのだ。


「ねぇ、レン」


 胸のざわめきが、どんどんと大きくなっていく。無視しておきたかったけれど、それは許さないとでも言うように、胸の奥でなにかが私を叩いてくる。


「私って、ちゃんと転生してるんだよね?」


 レンは、すぐに答えなかった。

 否定もしない、肯定もしない。ただ目を伏せ、なにかに抗うように静かに抵抗している。

 その沈黙が、すべてを語っている気がした。


 レンは──神様は──嘘を吐かない。

 

 けれど、すべてを語る義務があるわけではない。

 私は、静かに息を吸った。その音さえも聞こえるくらい、私たちの間に沈黙が流れる。いつもは好きな本の香りが、今だけは鬱陶しいと思ってしまった。


(知らないままでいられた時間は、今日で終わりかな)


 後には引けない選択。

 それを選んだからには、最後まで見届ける必要がある。そう確信した。


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