酒宴に関することは、司書の仕事に含みません
「おーい、ユイちゃん!」
レンと話すべきだ、と決意した次の日。
いつものように図書館で本を整理していると、外から大きな声がした。図書館では大声を出したくはないが、気まぐれな神様に抗議してものらりくらりと躱されるだけだ。諦めた私は、大声でその声に応える。
「何ですかー?」
「ちょっと来ておくれ!」
このしゃがれた声からして、きっとガルムだ。また、図書館の前で酒宴を催しているのだろう。やめてって言っているのに、まったくやめる気配がない。今日こそ、一喝してあげよう。
図書館の扉をバンッと開けて、外に出る。美しい星空が広がる上の崖で、神様たちがわらわらと集まって座っていた。近づくけば、風に乗ってお酒の匂いが鼻を掠めてくる。そのお酒臭さに思わず鼻をつまむと、私に気付いた神様たちが騒ぎ始めた。
「よう、ユイちゃん。どうだ、一杯」
「ソーヤさん、だめだよ。ユイちゃんは飲めないんだから」
「なんだぁ、ユイちゃん。俺の酒が飲めないってかぁ?」
「おじさん方。可愛いお嬢さんを困らしてはだめですよ」
今日も今日とて、図書館の前で酒宴を繰り広げている神様たち。酔っぱらって絡んでくる神様に、赤い顔をしながらも正論を言う神様。ただの酔っ払い神様たちが、そこで暴れまわっていた。
「まったく。神様もお酒が入るとだめになるんですね」
「わしはまったく酔わないがな」
私を呼んだガルムは、酒瓶を片手にガハハと笑った。ガルムは神様の中で一番の酒飲みだ。彼のせいで、
「で、何の用ですか? お酒の追加は、図書館の仕事じゃないですよ?」
「違うって。ほれ、あれを何とかしてくれ」
そう言って、ガルムさんはすっと指差した。その指の先には、酒瓶を抱きしめて寝ている神様の姿。淡い水色の衣に、黒い髪。まさか。
「レン?」
「酔っぱらって寝ちまってなぁ。悪いが、連れ帰ってくれんか」
「……私が?」
「おう。頼んだぞ」
ガルムはパチンと下手なウィンクをすると、再び酒宴の輪の中へと戻っていった。残されたのは、私と酔っぱらいなレンだけ。
仕方ない。私はため息を吐くと、レンの腕を引っ張った。




