第三話 散策
ルネ「あそこ、面白そう。行ってみよう。」
ルネは、暗い中でも遠くに街灯を見つけた。
LEDではなく、蛍光管の古い錆びた街灯だ。
唯一の明かりを頼りにそこまで進んでみる。
ルネは財布以外何も持っていなかった。
しばらく進んで街灯の場所まで辿り着いた。
ルネ「ここ、こんなに何もないんだ。いいな。この感じ。」
あたりは何もなく、ただ田んぼが広がっていた。
ルネは都会の郊外に住んでいたこともあり、建物だらけの景色を毎日見ていた。
だからか、ただ田んぼが広がっているこの土地が新鮮だった。
ルネ「昔からこんな場所に住んでたらな〜」
ルネはオカルトが大好きで高校の部活に「オカルト研究会」なるものが存在しており、そこの部員で部長を務めていた。
その事もあってか、都市伝説にすぐに触れられる世界がとてもうらやましかった。
ルネ「都市伝説の世界って素敵だよね。ふふ。」
目をキラキラさせながらその景色を楽しんでいるルネがいた。
ルネ「そうだ。あの森の中に行ってみようかな。」
ルネは遠くに森があることに気がついた。
街灯に照らされている入口を見つけたからだ。
ルネは都市伝説で見た様々な出来事の中で、森林で起こった出来事がもしかしたら体験できるかもしれない。
そんな気持ちを胸に抱えながら向かった。
その森の入口を少し行くとトンネルがあった。
もちろん見知らぬ土地なので初めて目にするトンネル。
それをくぐり抜けないと森の中には進めないらしい。
進むか、また駅に戻るか。
ここでルネは自分が手にしているもう一つのきっぷを手にしていることに気づく。
「きさらぎ→樹海 ※このきっぷを手にした方は、二度と現世には戻れません。」
「※目的地に到着すると現世では、病死したこととなります。」
ルネ「二度と現世には戻れません。...か」
ルネにとっては好都合だった。
現世では病死の扱いにしてくれて、自殺とはわからなくなるらしい。
そう、ルネは2つのきっぷを最初から手にしていたのだ。
タヒへの片道きっぷ。
望んだことが現実となるその手前まで来ていた。
ルネ「...現世に思い残すことはないしいいや。」
そうしてトンネルを進み始めた。
どこか、トンネルを進むたびに意識が遠のく反面、はっきりしている。
現実と空想の狭間にいるような感覚。
体から、意識だけが剥がれていくような。
それでもそのきっぷがルネにとって最後の希望だった。
ルネ「これで、終われる。さようなら、現実。」ーーーーーーーー
この後日、ルネは病死。とある大学病院で難病により息を引き取ったと戸籍に記された。
その後の両親がどうなったかは、また別の話。




