第二話 確信
20XX年11月
あれは昼下がりのことだった。
ルネは現実で生きることが限界になった。
生きていても、お金がかかる。
したいことをしようとしてもお金がかかる。
何をするにもお金がかかる。
ルネは高校生で、多少のバイトはしていたものの、人間関係が劣悪。
親も、あまり当てにならないほど悲惨だった。
ルネ「もう…生きてるのうんざりだな。」
「だって、生きていても親に認められない。」
「眼の前が霞んじゃうくらい何も見えない。」
「いっそ死んだって誰も気づかないよね。」
「そうだ!遠くにいこう。」
「誰にも見つからない、誰も行くことのないあの場所へ」
そうしてルネは、旅に出た。
とある片道切符を持って。
ルネ「海、きれいだなー。」
近くの朱雀駅から汽車に乗って、5分も経たないうちに地平線の眺められる海しか見えない景色が広がった。
ルネ「海に散骨される人もいるんだっけ」
ルネは死のことに関してはとても知識があり、埋葬方法をたくさん知っていた。
ルネ「最後くらい、認められて盛大に埋葬してほしかったなー」
30分して、とある駅で汽車から、SLに乗り換えた。
初めてのSL。どこか、それが心地よかった。
ルネは旅行をできるような家庭ではなかった。
環境も良くなく、団欒という単語がほぼ皆無に等しいくらいに。
だからか、列車に乗ること自体が初めてだった。
ルネ「昔の人はこんな感じで旅してたんだ。」
「なんとなく楽しいな。」
そんな独り言を誰も乗っていない客車の中でポツリ呟いた。
SLはどんどん山の中へ、森の中へ。
どれほどの時間乗っていたのだろうか。
ルネは気がついたら、列車が動かなくなっていることに気がついた。
どうやらSLが心地よくいつの間にか寝てしまっていたらしい。
ルネ「ここは?」
駅の中の看板を探し確認してみる。
【きさらぎ】
←やみ かたす→
看板にはそう書いてあった。
ルネ「ここが、あのきさらぎ駅か」
ルネは知っていた。
都市伝説で、きさらぎ駅という寂れた駅があると。
確かに駅を見渡してみると、ところどころ錆びていたり、手入れがされておらず、とても不気味な雰囲気が漂っていた。
ルネ「ここ、心地良い。」
ルネはどこか懐かしさを感じたのか、その雰囲気が心地よかった。
ルネ「散策してみよう」
そうして、朱雀駅で買ったきっぷを駅に設置されていた運賃箱にそっと入れた。
そして誰もいない改札を抜けた。
どうやら無人駅らしい。
出た時間が昼下がりだったのもあってか、すでに日が暮れて外は何も見えないくらい暗かった。
夜の知らない土地。
だが、ルネは夜の街がとても安心した。
ルネ「ここだと誰にも邪魔されない。安心する。」
ルネは人のことは無関心だったが、自分の世界や、自分に危害を加えられることがとても嫌いだった。
夜は出歩いてる人が少ないからこそ、一人でいる感覚が心地よかった。




