プロローグ2
世界震災から10年後の西暦2116年、人類は世界各地で共通の敵に襲われていた。
それは、二足歩行のいびつな外見をした異形のモノたち。
人々は、異形のモノたちを総称してアビスと呼んだ。
アビスは世界震災の爪痕であるデッドゾーンといわれる大地の裂け目から突如現れ、人々を襲い、喰らった。
この突然の襲撃に人々は何の抵抗も出来ず、多大な被害を受けた。目の前で家族や恋人、友人が喰われる様を見た者も少なくない。
この食人鬼たちを早急に廃除しなければならないと考えた世界各地の指導者たちは、互いに連絡を取り合い、反アビス勢力を組織することにした。
それが、反アビス傭兵部隊である。 武装は刀剣や銃器、槍や鉄扇など様々で、個人が得意とする得物を身に付けた。
自分たちを護るために作られた具体的な希望であるため、人々はアビスが駆逐されることを期待していた。
とはいっても、反アビス傭兵部隊の主力は各地の自警団や志願者たちで構成されているものがほとんどであった。そのため、アビスの襲撃こそ減少傾向にあったが、その一方でこちらの被害は着実に拡がりを見せていた。
この深刻な事態に、指導者の一人がひとつの案を提示した。
それは、アビスに対抗する傭兵を集めて統率するのではなく、傭兵を育てて統率しようというものだった。 一刻の猶予も無いなかで、そんな時間はないという指導者たちもいた。ただ、現状の寄せ集めの傭兵たちでは、とてもアビスに対抗出来ないという事もわかっていたので、傭兵を育てるという事でまとまり、その旨は世界中に知らされた。
ここからの対応は素早いものだった。
まず、互いに近い位置に存在する村や街を併合し、より大きな集合体、コロニーを作りだした。
世界に存在した無数の小規模集合体は減り、小規模集合体の集まりであるコロニーが増えた。
このため、コロニー一つの傭兵数が飛躍的に伸び、アビス被害も格段に減ることとなった。
ここまでで、約2年。 コロニー確立と同時進行で進められていた傭兵育成学校建設もコロニー確立の1年後には終了した。
この3年の間に住民たちも動いた。
ある者は医学を学び、ある者は鍛冶の腕を磨き、傭兵たちをサポートしながら、傭兵学校の誕生を待っていたのだ。
傭兵学校は世界全土で、まず七ヶ所作られた。
旧北アメリカのスミルナ校、旧南アメリカのサルディス校、旧ロシアのペルガモン校、旧フランスのラオディキア校、旧アフリカのティアティラ校、旧イギリスのフィラデルフィア校、そして旧日本のエフェソス校である。 この名前は、古代遺産ヨハネの黙示録に登場する七つの教会の名前から付けられていた。
そして、1年の生徒募集期間を挟んだ西暦2120年、満を持して傭兵学校が開校されのである。