第9話「異世界配信者、登録者1000人突破する」
「とは言ったものの……どうやって探せばいいんだ? せめて何か手がかりがあれば……」
怒りと焦燥に突き動かされ、森を駆ける。だが追跡の糸口すらつかめない。
そのとき、脳内にひときわ鋭い通知音が響いた。
《この状況を打開するスキル:登録者1000名達成で解放》
「は!? 千人!? 今、まだ二百人そこらだろ!?
万年底辺配信者の俺にどうしろってんだよ!!」
だが、諦めきれない想いが叫びとなってあふれ出た。
「いや……今はなんでもいい。土下座でも、頼み込みでもしてやる。
俺はミレリアを助けたいんだ! 見てくれてるみんな、頼む!!
少しの間だけでもいい、今だけでも……登録してくれ、力を貸してくれ!!」
「……ダメか? やっぱ俺、なんもできねぇのかよ……」
諦めかけたその瞬間――
通知が次々と、頭の中に鳴り響く。
《登録者増加》
《登録者増加》
《登録者増加》
《コメント:拡散しました!/絶対助けよう!/みんな登録者をわけてくれ〜!》
「え……!? まじで!? 860……900……950……990……995……996……997……998……999……1000!!」
《登録者数:1000人達成》
《新スキル獲得:〈観察者の眼〉》
《効果:過去に接触した対象の動向を、最大24時間まで一度だけ遡って観察できる》
「触れた相手の過去……! ミレリア、いける!」
《スキル〈観察者の眼〉発動:対象ミレリア》
目の前に、小さなウィンドウが現れる。倍速再生やスキップ機能がついた、見慣れた配信の管理画面そっくりなUIだ。
「ははっ……これならわかる! みんな、マジでありがとう!!」
映像を巻き戻すと、ミレリアが村の外れにある廃小屋のような場所に囚われている姿が映る。
どうやら、聖草のありかを探させようとしているらしい。
「待ってろよ、ミレリア。今、行くから!」
《コメント:マジかよ/これはヤバい/全力支援いきます!》
森を駆ける俺は、身体の軽さと鋭くなった感覚に驚く。
「うおっ……!? 速ぇ……! しかも……人や動物の気配まで感じ取れる……!しかも力が湧き上がる。
これが……登録者1000人の力……!実力じゃねえしチートだな、でも今ありがてぇ!まってろ!ミレリア!」
《コメント:主人公っぽくなってきたな!/いけ!配信者!》
《チャンネル登録者+51》
加速した脚で森を突き進み、ついに視界が開ける。
黒いローブ姿の男たち、そして――捕らえられているミレリアの姿が目に飛び込んできた。
「おい、早く案内しろ! さもなくば――」
ミレリアの喉元に刃が突きつけられる。
「嫌です! あれは、村の、村の人々を守るためのもの……
あなたたちなんかに、絶対に渡しません!!」
「じゃあ、少し痛い目にあってもらおうか……」
「――させるかよ!!」
刃がミレリアに触れるよりも早く、俺は飛び出していた。
手にしていた木の枝を高く振り上げる。
「配信者魂、見せてやるよッ!!」
――ズドン!!
木の棒がうなりを上げ、ローブの一人を木に叩きつけるように吹き飛ばす。
その衝撃でフードが外れ、男の顔が露わになる。
「……エルフ……!?どうして魔族と一緒にいるんだ!」
「バレては仕方ないな……下等な人間が! 生きて帰れると思うなよ! いけっ!!」
残りのローブの男たちが一斉に襲いかかってくる。
だが俺は一歩も引かず、ミレリアの前に立ちふさがる。
「返してもらうぞ……ミレリアは、お前たちなんかに渡さねぇ!!」
《コメント:うおおおお!/かっけぇぇぇ!!/これは惚れる/また棒かよww》
《チャンネル登録者+36》
こうして今――
森に、戦いの火蓋が切って落とされた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今回はついに、ヒロトが“誰かの為に本気”を見せる回でした。
登録者の数が力になる――という設定が、
視聴者との“信頼”や“熱”と直結する形で機能し始め、
ただの実況ではなく「誰かのために動く物語」へと進みはじめています。
そして、次回はいよいよバトル本番。ヒロイン救出編、最高潮に突入です!
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引き続きどうぞよろしくお願いします!