第8話「エルフの娘と配信者」
朝の光が差し込む村の小道。
昨夜の宴が嘘のように静まり返り、空気はどこか張りつめていた。
「ヒロト様、少しだけお時間をいただけますか?」
ミレリアが、まっすぐこちらを見ていた。
昨日の騒動のあと、どこか顔が引き締まっている。
「いいけど……って、今さら“様”とかやめてくれって。距離ある感じ、苦手なんだよな」
「……わかりました。じゃあ、ヒロトさん」
名前を呼ばれただけで、ちょっとドキッとする。
けど、それ以上に気になることがあった。
「そ、そういえば昨日、村長のこと……お父さんって言ってたよな?」
「はい。ライネルは私の父です。……驚かせてしまってすみません」
《コメント:やっぱりお嬢様か!/ヒロイン王道展開来たな》
「いや、それよりそんな偉い人が……どうしてあんな場所にいたんだ? 村の外で、1人で」
ミレリアは、少しうつむいた。
「私は“聖草”という特殊な薬草を採りに行っていたんです。
それが……この村を外界から守る結界を維持するために必要で」
「結界……ってことは、村のために?」
「はい。放っておけば、魔族に村の存在が知られてしまう恐れがあります。
聖草は満月の夜にしか咲かず、代々うちの一族にしか見つけることができないんです。
本来は父が行くはずでしたが、実はああ見えてかなりの高齢で……私が代わりに」
“使命”――その言葉に、思わず息を飲む。
この村を守るために、命懸けで森に入っていたなんて。
「……そっか。君はすごいよ。俺なんかより、全然かっこいいじゃん」
「え?」
「俺なんて、ただ“認められたい”ってだけのなんにもできないやつでさ。
たまたま力を手に入れただけ……でも、君は最初から誰かのために動けてる。
マジで、かっこいいよ」
ミレリアは驚いたように目を見開いた後、少しだけ微笑んだ。
「ヒロトさんの言葉、嬉しいです。でも、私にとっては……」
――ドンッ!
その瞬間だった。
ヒロト達の近くで爆発音が鳴り、爆風と煙幕が二人を包む
「っ、なんだ!?…ミレリア!大丈夫か?!!」
顔を上げるとそこには黒いローブをまとった男たち。そして、その中に――
「ミレリアッ!!」
《コメント:おい嘘だろ!?/さらわれた!?》
黒ローブの集団は魔法を唱えヒロトを攻撃し振り切った、そしてそのまま森の奥へと消えていった。
「っ、チクショウ!!なんでだよ……!俺はなんで、こんな時に!何もできないんだ!」
地面に拳を叩きつける俺に、村人たちが駆け寄ってくる。
その中には、あの村長――ライネルの姿もあった。
「ヒロト殿……ミレリアが、さらわれたと……?」
「俺の目の前で、です。……すみません……!」
拳を握るしかない。自分のふがいなさが、悔しくて仕方なかった。
でも――それ以上に、心に火がついていた。
(絶対に助ける。あの子は、俺を“ちゃんと”見てくれた。信じてくれたんだ)
そのとき、脳内に通知が走る。
《緊急クエスト発生:ミレリア救出作戦》
《報酬:ステータス+/“絆”効果の常時獲得が可能に》
「やってやるよ……!」
拳を強く握り直す。俺は、決めた。
「ミレリア、必ず助けに行くからな!!」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
ヒロイン・ミレリアの背景と使命が明かされ、
少しずつ縮まっていた距離が、ようやく繋がりかけたその瞬間――
唐突な“誘拐”という急展開。
ヒロト自身も無力さを痛感しながら、初めて“誰かのために動く”覚悟を決めました。
ちなみにエルフの寿命はこの世界で千年近くとされていてイケメン族長は902歳になります。
かなりご高齢…!
次回は、視聴者の力を借りた“配信者らしい救出作戦”が始動します。
バズって助けてヒロインも取り戻す、まさにタイトル通りの展開へ!
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