第7話「異世界初恋は儚い夢でした?」
翌日、村は朝から祭りの準備で大賑わいだった。
村人たちは飾りを作り、果物や料理を運び、焚き火の準備に大忙し。
「すごい……ここまで歓迎されるとは」
広場の中心には、舞台のような壇上と、ふかふかの椅子が用意されていた。
だが――
「これ……もしかして、俺の席じゃねぇな……?」
壇上のど真ん中に座っていたのは、昨日のイケメンエルフ――ライネル村長。
その横には、美人のエルフ女性たちがズラリと並んでいる。
そして俺はというと、舞台の端っこ。……完全に見切れ位置だった。
《コメント:村長やっぱ顔面最強/照明の当たり方神》
《コメント:ヒロトどこw/主役が背景で草》
《チャンネル登録者+9(注目対象:ライネル)》
《ステータス変動:なし》
「またかよ……」
そのときだった。
隣に座っていたミレリアが、俺の手をそっと握ってきた。
「私は、ちゃんと見てます。ヒロト様のことを。
あの時も本当に勇敢で、かっこよかったです。まるで伝説の勇者様みたいでした」
《コメント:えっ尊い/急にヒロイン力高まるやん》
《コメント:ミレリア推す/確かにあれはかっこよかった》
「ま、まぁな!てか、べ、別に族長に対抗心抱いてるわけじゃねぇし!
まぁでも……確かに、あの時は俺、かっこよかったよな!」
「はい!!」
《コメント:ヒロト童貞丸出しすぎw/照れるなw》
「うるせぇ!!」
「ヒロト様?どうされたのですか?」
「い、いやごめんごめん!なんでもないんだ!」
ついコメントに突っ込んでしまったが、
ミレリアのその一言で、心が少し救われた気がした。
そして、宴が始まった。
演奏、踊り、歓声――水と光の魔法が交差し、空には無数の水球がふわふわと浮かんでいる。
まるで星空のように、美しくきらめいていた。
「さあ!我が娘を救ってくれた英雄に、盛大な拍手を!」
「娘?!」
ライネルが声を張り上げると、村人たちが一斉に拍手を送った。
だが、その視線も拍手も……明らかに俺じゃなかった。
《コメント:村長まじ王子やん/ビジュアルチートだろ》
《コメント:ミレリア村長の娘だった!/儚い恋だったな》
相変わらずうるせぇ連中だ。
そのとき、俺の脳内に通知が走る。
《新スキル《影の立役者》を獲得しました》
《発動条件:自分以外の存在が自分より目立つ回数が規定値に達しました》
「……おい、ふざけんな」
その直後だった。
「きゃあっ! 火が……!」
会場の一角で、悲鳴が上がる。
魔法の灯火が暴走し、舞台の幕に燃え移っていた。
「っ、ミレリア! 下がれ!」
俺は咄嗟に彼女の手を引き、ステージから飛び降りた。
あと一歩遅れていたら、大火傷間違いなしだった。
《コメント:今の反応早っ/やっぱヒロトすげぇな!?》
《チャンネル登録者+18/注目集中:ヒロト》
《ステータス一時ブースト:+1.6》
「……やっぱり凄い?…って言ってる場合じゃねぇな」
燃え上がる幕。
その上空には、演出用の水球がいくつも浮かんでいた。
「よし……あれだ!」
俺は地面に転がっていた石を拾い、最も大きな水球に狙いを定めた。
腕を振り抜く――
――パシャアッ!
命中。
水球は破裂し、中の水が勢いよく舞台へと降り注ぐ。
炎を包み、ジュウッと音を立てて鎮火した。
「ヒロト様! 魔法も使わずに……すごいっ!」
観衆から歓声が上がる。
俺はふんっと鼻を鳴らし、どこか誇らしげに言い放った。
「これくらい普通だろ!」
ミレリアはそんな俺を見て、嬉しそうに微笑みながら拍手を送る。
……俺は気づいていなかった。
その様子を、宴の隅の暗がりで――じっと見つめる視線があったことに。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
最後、ヒロトはきっちり“美味しいとこ”を持っていってくれました!
ヒロイン・ミレリアとの距離も縮まりつつある中、
宴のラストには“何者かの視線”という不穏な影も
次回は、新たな出会いと転機がヒロトを待ち受けます!
ついに初評価、ブクマ頂きました!とても感動です!
ありがとうございます!
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