第6話 「バズは結局かおですか?」
エルフの少女――ミレリアに肩を支えられながら、俺は森を抜けた。
視界が開けた先にあったのは、まるで絵画のような風景だった。
澄んだ空気。クリスタルのように輝く泉。木々に溶け込むように造られた住居。
まさに“異世界のファンタジー村”そのもの――そして、その中心に立っていたのは。
「おかえりなさい、ミレリア。無事でよかった……」
出迎えたのは、銀髪で長身の男。
まるでゲームのパッケージから抜け出したような、顔面偏差値MAXのエルフだった。
《コメント:誰だよこの王子/かっけえ/映画出てる?》
《コメント:はい、推し変です/ヒロインの兄?/イケメンで限界》
《チャンネル登録者+101》
「おいおいおいおい!俺がオーガ倒した時より好反応じゃねぇかよ!」
《通知:注目対象:ライネル=フェイン(エルフ族)》
《ステータス変動:対象外につき無効》
「無効……?つまり、このスキルは“俺自身が注目された時”しか効かないってことか?」
案内されるまま村に入ると、騒ぎはさらに加速した。
すれ違う村人全員が美男美女。整った顔立ちに、華奢な体躯。
まるで雑誌の中を歩いてるような錯覚すら覚えた。
《コメント:美人多すぎ/目の保養/ヒロイン誰にする?》
《コメント:ヒロトくん背景扱いで草/がんばれ主人公!》
俺の心はもうズタボロだった。
「いや、違うだろ?俺が!オーガ倒して!助けて!村まで連れてきたんだぞ!?」
《コメント:でも顔は村長に軍配/癒し枠として残します》
「うるせぇよ……!」
その後、ミレリアに案内され、村の中心部にある休憩所へ向かった。
食事と寝床も用意され、体はかなり回復してきた。けど――
「この村に来て、登録者はかなり増えた……なのに、全然強くなった感覚がねぇ。
オーガ倒した時は、もっと力が湧いてきたのに……」
登録者は増えた。コメントも盛り上がってる。
だけど、それは全部“俺以外”が見られた結果だった。
この世界では、自分自身が注目されなきゃ意味がない。
《システムメモ:強さは“注目の熱量”に比例します。人気を得る者が、最も強くなります》
「……ちくしょう、顔かよ……!」
そのとき、休憩所の戸がノックされた。
「ヒロト様、よろしければ――明日、村で行われる“感謝の宴”に参加していただけませんか?」
ミレリアが、柔らかく微笑みながら言った。
「宴……?」
「貴方のおかげで、村の子供たちも安心して森に戻れます。
皆、直接お礼がしたいと……」
――宴。
つまり、“舞台”ってことか。
「……よし、行く。行かせてもらうよ」
やってやる。バズるために。
今度こそ――“主役”になってやる。
美男美女はバズりやすい。
なんてずるいんだ。
しかしヒロトも普通の世界では割とイケメンな部類です。それが背景になるくらいのエルフ恐ろしいですね!