第5話 「オーガとエルフと配信者」
「さぁあああああ、きやがれ変態オーガ!
お前の負け姿、全世界に晒してやんよ!!」
――ゴオオオオッ!!
オーガが咆哮を上げる。
それだけで耳がビリつくような重低音。
さっきの一撃は、たまたま当たっただけだったのかもしれない。
《コメント:逃げて!/無理するな!/でも見たい!》
《コメント:戦え、配信者!!》
「うるせえ!やってやんよ!!」
俺は棒を握り直し、全力で駆け出した。
実況どころじゃない。
全身全霊の一撃に願いを込める。
「これが……底辺配信者の底力だあああああ!!」
《スキル《ヒーロー願望》発動:信頼値ボーナス加算》
《感情値上昇:+92%》
《現在ステータス:ザコ+9.8(超一時ブースト中)》
振りかぶった棒が、オーガの膝にズブリとめり込んだ。
バキィンという鈍い音とともに、巨体が膝をつく。
「よし!いけるっ!!」
そう思った瞬間上から何かが落ちてくる気配を感じ、咄嗟に回避する。間一髪その物体は轟音と共にヒロトが居た場所へ落下した。
「な、なんだ?岩?雷?」
一瞬思考が混乱したがよく見ると反撃したオーガの手だ。あんなの直撃したら粉々になってしまう。ヒロトは一瞬にして血の気がひく。
「ヤバい!すぐに次の攻撃が来る。逃げないと!」
パニックの中、ヒロトは違和感に気がついた。
(あれ?次の攻撃がこない…?そうかやつは図体はデカいけど動きはそこまで速くないのか!それなら!)
「ヤーい!鬼さんこちら!」
ヒロトはオーガの攻撃を誘う。オーガは激昂してヒロトに拳を振りかぶる。それをヒロトは寸前で回避する。
「いけっーーーーー!今だッ!」
ヒロトは喉元めがけて、渾身の一撃を叩き込んだ。
――ゴシャアアッ!
喉元から血を吹き出しオーガの体が、ゆっくりと前のめりに崩れ落ちていく。
《チャンネル登録者+46》
《現在の登録者数:151》
《新スキル《カリスマ》獲得:周囲に一時的な士気上昇効果を付与》
《称号獲得:「見習い英雄」》
「やばかった!やばかった!はぁ……っ、はぁ……っ。マジで……勝った……」
膝をついた俺のもとへ、少女が駆け寄ってくる。
顔は泥まみれ。でも、笑っていた。
よく見ると、耳が尖っている……まさか――エルフ?
「本当に……ありがとうございます……っ!
あなたは命の恩人です……!」
《コメント:やば、泣きそう/この回、神回/登録不可避》
《コメント:推し決定/ヒロイン可愛い/エルフキターーーー!》
「……かわいい。」
思わず口をついて出たひとことに、少女がきょとんとする。
「え?」
「い、いやいや!なんでもない!
君みたいなエルフを見るの、人生初でちょっとビックリして……!」
あたふたしていると、空に通知ウィンドウが浮かび上がった。
《エクストラミッション発生》
《新クエスト:「英雄様、エルフの村へご一緒に」》
目的:エルフの少女とともに隠れ里へ向かう
報酬:食料、寝床、登録者ボーナス(+10%)
《コメント:エルフと寝床?けしからん/ご都合展開すぎワロタ/エルフの里見てみたい》
「……はは、何言ってんだコイツら…」
そんなことを呟いた俺に、少女が少し顔を赤らめて口を開く。
「あの……もしよければ、私の村に来てくれませんか?
お礼がしたくて……!」
「もちろん!!じゃなくて…!い、いいのか? こんな見ず知らずのやつを、信用して」
「もちろんです! あなたは命懸けで私を助けてくれたんですから!」
その純粋な言葉に、俺は少し罪悪感を覚えたが素直に甘えることにした。
正直、もう立てないくらい体力も気力も使い果たしていたし。
「あぁ……じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
少女は疲れ切った俺の肩を支えながら、森の奥へと歩き出した。
俺は胸を高鳴らせながらついていく。
――まさか、このあと“あんなこと”になるとは思いもせずに。
ついに!
ヒロイン登場!エルフいいなぁ
実は新規登録者の半数以上はエルフ目当てだったりします。
次回は登録者爆伸び予感ですね!
是非、ブクマ、コメントよろしくお願いします!