第4話 異世界バズは命懸け
森の奥で、女の子の悲鳴が響いた。
「やだっ……来ないで……!」
――バキバキバキッ!
木々をなぎ倒して進むのは、巨大な赤茶色の化け物。
筋骨隆々の体に小さな頭。牙をむき出しにし、唸り声を上げている――オーガだ。
「マジで出たよ……バケモノ系のやつ……!」
その場に蹲っていたのは、金髪ロングの少女。
泥だらけの白いローブ。小さな籠には薬草らしきものがこぼれていた。
どう見ても一般人。逃げる気力すら残っていなさそうだ。
そんな時、少女がこちらに気づいた。
《コメント:これ助けたら惚れるやつ!/守れ!今だ!》
《コメント:女の子可愛い/新キャラ来た/ヒロイン登場やん》
「……こっちは命懸けなんだよ、こら!」
叫びながらも、足は止まらなかった。
視聴者の期待。登録者の欲。――それより何より、あの目。
助けて、って目をしてた。
「っしゃああああああ!!」
俺は全力で突っ込みながら、木の棒を振りかぶる。
頭の中では実況モードがフル稼働していた。
《アラート:今の力では危険な相手です》
「現在登録者83人!そらそうだろうな!
でも――見捨てるわけにはいかねぇだろがよっ!」
《スキル《バズ・チャージ》発動》
《感情値ブースト:×1.8》
《一時的ステータス上昇:ザコ+4.9》
棒がオーガの足にクリーンヒット。
ゴンッという鈍い音とともに、巨体がよろめいた。
「おいっ!今のうちに逃げろッ!!」
「は、はい……!」
少女がこちらを見つめる。その目が――潤んでいた。
《コメント:今のは惚れる/やっべぇ名言きた/登録した》
《チャンネル登録者+22》
《新スキル《ヒーロー願望》獲得:守られた者から“信頼”を得るとパワーが倍化》
「……は?」
気づけば背中が光っていた。
実況バフのオーラが、今までと桁違いの輝きを放っている。
「よぉし……なんかわけわかんねーけど、今ならいける気がする……!!」
棒をもう一度構え、俺は吠える。
「さぁあああああ、きやがれ変態オーガ!
お前の負け姿、全世界に晒してやんよ!!」
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ついにヒロイン(?)っぽい少女と邂逅し、ヒロトが“英雄”としての第一歩を踏み出しました。
どうやら異世界でもバズの道は一筋縄ではないようですね
次回はオーガ戦の決着!ヒロトの初英雄伝説がどう描かれるのか、ぜひお楽しみに。
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