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【配信者転生】登録者=強さの世界で底辺実況者が最強に!  作者: 山中海
第二章【異世界配信者、魔界配信編】
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第31話「古竜vs異世界迷惑系配信者」


 ヒロトは地に伏し、呻いた。感覚は麻痺し、視界が滲む中、脳裏に浮かぶのは“視聴者”の顔と、彼を支えてくれた数々のコメントだった。


 「ほんと、意地はっちゃってさ。この世界がなんだっていうんだ?ゲームの中みたいなもんじゃないか。君だってやった事あるだろう?ゲームの世界で人を殺したり、街を破壊したり、あれと一緒さ」


 「ちがう…!この世界の人達はちゃんと生きてる!」


 「ダサい!エルフとかはべらせてキモすぎ。偽善者め」


「なんだとっ!」


「違う違う。俺の方のコメントの声さ。でも一理あると思うよ。君の行動はただの偽善だ。正義ごっこなんだよね。ま、どうでもいいや。もう、これ以上撮れだか無さそうだし…バイバイ」


 そう告げると輝也は手を前に出し、強力な魔力をヒロトたちに向けて放った。


(ダメだ……ここで終わるのか……?)


 ――!


「《双重結界・展開!》!」


 轟音とともに、まばゆい光がヒロトを包んだ。リュシアとミレリアの魔法障壁が、ヒロトの身体を守っていた。


「……ヒロトさん!大丈夫ですか!?」


「立て! おぬしは……皆の前で誓ったであろう!」


 二人の声が、崩れかけた意識を呼び戻す。


 そして――


「まだ終わっていないぞ!お前は、“誰かのために”を貫くのだろう?」


 その声に、ヒロトは顔を上げる。


 炎をまとう赤銀の鎧、肩を裂かれ血を流しながらもなお立ち続ける《烈陽の剣帝》――グラディウスがそこにいた。


「……なんで……」


「お前の背中に皆、希望をもらった。私も……その一人だ。単純に、お前のことが気に入ったのさ」


 そう言って、彼は腰の剣を地に突き立てた。その刃は、揺らめく陽炎のように燃え、空間ごと熱を帯びる。


「この剣はな……元は“二本一対”のものだ。一つはリュシアに託した。今、君が手にしているものだ。そして今、もう一つも君に託す」


 ゴウン――と何かが起動する音が響く。


 ヒロトの前に、ウィンドウが開かれる。


《グラディウスとのコラボが確定しました》

《新スキル獲得:〈コラボリンク〉――一定以上の信頼関係が成立した相手と共闘時、認知の共有およびスキル継承が可能になります》


 その瞬間、ヒロトの中に流れ込んでくる――戦場の気配、刃の重み、炎の意志。それはまさに、“グラディウスそのもの”の感覚だった。


 右手に渡された長剣を握ると、さらに通知が表示される。


《スキル継承:烈陽・双燐舞/剛斬“日輪”》


「お前には、“未来を選ぶ”自由がある。だが自由は、責任を背負ったときにこそ意味を持つ。ヒロト……お前の自由をその剣で切り開け!」


 ヒロトは歯を食いしばり、ゆっくりと立ち上がる。


「……ありがとう。でも、剣を渡してあなたは……」


「問題ない」


 次の瞬間、グラディウスの全身が紅蓮に包まれた。


 肌が割れ、鎧が砕け、炎が天へと昇っていく。その中から現れたのは――伝説に語られた古代種、“エンシェントドラゴン”。


 炎翼を広げ、雷鳴のように咆哮を上げる。


「こっちの方が、慣れてるんでな」


《コメント:え!?グラディウスって竜だったの!?/やばすぎる/これはマジで神回……!》


「ヒロト、君のおかげでこの姿になれるまで力が戻った。礼を言う」


「ねぇ、もういいかな? さぁ、続きを始めようか」


 輝也が空間を捻じ曲げ、戦場を再構築する。


「でもさぁ……ドラゴンとか、もう飽きたんだよね」


「そこらの竜と一緒にするなよ」


 次の瞬間、天地が逆転し、圧倒的な光と重力が戦場を襲う。


 それでも、グラディウスは――竜の姿で立ち向かう。


 数秒が数分に感じるほどの激戦。リュシアが息を呑んで呟いた。


《コメント:グラディウスすげぇー!/いけんじゃね?/これが竜の力…》


そのコメントに答えるようにリュシア口を開く



「……あやつはただの竜ではない。世界の始まりに近き存在……伝説の“エンシェントドラゴン”じゃ。その認知の力は凄まじいものじゃ。奴がこの姿になるのを初めて見たがここまで凄まじいとはの…!しかし――」


 グラディウスは悟っていた。


(……届かぬ。だが、“彼ら”ならいつか――)


「リュシア! 二人を連れて、いけ……人間界へ!」


「な、何を言っておる……わらわは残るぞ!」


「お前には、“導く責任”がある!」


 竜の咆哮が戦場を裂き、その隙に《アグニレイド》が飛び立つ準備をする。


「乗れ! 今しかない!」


 ヒロトは涙をこらえ、グラディウスを見た。


「……あなたは!」


「ヒロト。リュシアを頼んだぞ」


 リュシアがヒロトを背に引き上げ、扉が開く。その優しくも重い一言に男の覚悟が全て込められていた。ヒロトはそれ以上、口を開く事ができなかった。


 最後に見たのは――燃え尽きるグラディウスの背。


 輝也の放つ光が、彼を飲み込もうとしていた。


 それでも、彼は門を破壊する動作を止めなかった。


 そして遠くに遠くに転送させる中ヒロトの脳裏にアラームが鳴響く――


《リンク切断:対象存在が確認できません》

《グラディウスとのコラボリンクは解除されました》


 表示されたその通知に、ヒロトは唇をかみしめる。


 だが――


 手の中の剣は、なおも熱を帯びていた。


(……あんたの“意志”は、俺が受け継ぐ)


「あんたの守りたかったもの全て。絶対に……守ってみせる。俺の、この手で!」


 そして、物語は人間界編へ――

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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