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【配信者転生】登録者=強さの世界で底辺実況者が最強に!  作者: 山中海
第二章【異世界配信者、魔界配信編】
30/32

第30話「魔王配信者降臨」

ゼルドランが、一瞬にして“消された”。


 跡形もなく、音すらなく。まるで最初から存在していなかったかのように。


 あまりにも静かに、あまりにも簡単に。


 その中心に立っていたのは――スーツを着た、どこにでもいそうな日本人の青年だった。


「……ヒロトくん、だよね? 会いたかったよ。君、めちゃくちゃ数字持ってるじゃん! 最高だよ、僕もファンなんだ!」


 軽薄な笑みとテンション。その異様な空気に、ヒロトの背筋が凍る。


(は?……人を、あんなふうに消し去っておいて……なんだコイツ……)


「ヒロトくん、ぜひ僕の“共同配信者”になってよ」


 まるでスカウトか何かのように、当然の顔で手を差し出してくる。


(……気持ち悪い)


「気持ち悪いなんて、失礼だなあ。せっかく会えたのに」


「っ……まさか、心を読んで……?」


「ああ、これ? 登録者100万人突破で手に入れたスキル、“思考視認”。君の思考が字幕みたいに読めるんだ。便利だよね、ほんと」


《コメント:やばすぎる/100万超えスキルがチートすぎる/ヒロト逃げてー!》


「ヒロト! 逃げるんじゃ! 奴こそがもう一人の配信者、現魔王じゃあ!」


「やぁ……負け犬さん。君は映えないから、少し黙っててくれる?」


 そう言って手をかざした瞬間、リュシアは吹き飛ばされ、壁に激突した。


「リュシアッ……! てめぇ、一体何が目的だ!」


「楽しいからだよ? それ以外に、何か要る?」


 その笑顔が、ほんの一瞬だけ冷たく歪んだ。


「僕はね、“楽しいこと”が正義だと思ってるの。退屈、努力、義務、使命――そんなの、クソだよ。楽しいかどうかがすべて。それだけだよ。誰かのため? 正義? ……それ、数字になるの?」


「なるに決まってんだろッ!!」


 ヒロトの怒声が響き渡る。


「俺はこの世界に来て、誰かのために命懸けて戦う人たちをたくさん見てきた。それは、きっと元の世界でも変わらない。だから俺は、誰かの背中を押せたなら、数字なんてどうでもいい! それを信じて、ここまで戦ってきたんだ!」


 輝也は、クツクツと笑った。


「君、ほんと面白いね。……でも、その理想、ちゃんとバズった? 流行った? 人気出た?」


「……」


「僕は違う。“見られること”の最適化だけを突き詰めた。この世界のシステムを完全に理解して、“楽しい”という感情を支配した」


 その瞬間、空間が一変する。


 無数のウィンドウが空中に浮かび、輝也のライブリンクが展開された。


《システム通知:輝也の登録者数――2,027,114》

《スキル構成:次元編集/視界共有/無音詠唱/戦闘領域再構築……etc》


「……なんだ、この数……!」


「君がどんなに理想を語っても自由だよ。でも、この世界では“人気”がすべて。――君じゃ、僕には勝てない」


 その言葉とともに、地面が割れ、空間が歪み、重力がねじれた。


「ぐっ……!?」

「妾の結界が……意味を成しておらぬ……!」

「全力で防御を……っ!」


 ヒロトたちは、完全に圧倒されていた。


「ねぇ、ヒロトくん。そうやって誰かを守るって……楽しい? 一緒に配信しようよ! あ、もっとチャンネル登録者増える方法も教えてあげる!」


「……」


 ヒロトは、ぐらつく身体を支えながら立ち上がる。だが、その瞳は、決して逸らさなかった。


「……お断りだっ!!」


 その瞬間、グラディウスが輝也の背後に跳び込んだ。


「喰らえッ――烈陽・終焉斬ッ!!」


 だが、剣が振り下ろされる直前。時が、止まった。


《スキル発動:時間拘束・Lv5》


「残念。攻撃しようとする“思考”が、見えてるんだよね」


 グラディウスが、吐血しながら地に墜ちた。


「グラディウスさんッ!!」


「このままだと……全滅だよ?」


 その時――上空に、巨大な“竜”の影が現れる。


「リュシア……!」


「ヒロト、退くぞ! 今は……あれには勝てぬ!」


「……くそっ……今は退くしかない……!」


 リュシアが召喚した竜が、ヒロトたちをすくい上げる。


 輝也はその背中に向かって、軽く手を振った。


「お! ドラゴン! いいね、かっこいいじゃん」


「お前なんかに……この世界をめちゃくちゃにさせてたまるか! 必ず戻って、止めてやる!」


「ダメだよ、ヒロトくん。引き伸ばしは、ウケないからさ」


 そう言って指を鳴らすと、空間の重力が逆転し、ヒロトたちは再び地に押し潰されそうになる。


「くっそ……逃げることも、できねぇのかよ……!」


 輝也は、楽しげに笑いながら、スマホを構えた。


「ヒロトくん、その顔……いいねぇ。絶望の表情は、最高のサムネイルになるよ」


――続く。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


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