第3話「オーガってマジっすか?」
ゴブリンの死体を前に、俺は膝をついた。
「……勝った。俺、マジで勝ったんか」
いまだに手は震えてる。棒を持つ手も、脚もガクガクだ。
なのに――体の奥から、じわじわと力が湧いてくる。
《現在の登録者数:83》
《ステータス:ザコ+2.5》
《スキル《バズ・チャージ》:一時的に登録者数×0.1ぶんの攻撃力上昇(視聴者の“興奮値”で倍率変動)》
《スキル《コメント伝達》:一定確率で視聴者コメントが届き、状況に影響を与える》
「……これ、完全にゲームじゃねぇか」
でも現実だ。
俺は今、“見られることで強くなる”っていうバグみたいな人生を手に入れた。
《コメント:さっきのバトル熱すぎw/正直もっと見たい/次まだ?》
《コメント:なんで棒で勝てるのw/バズ・チャージ強すぎワロタ》
……やばい。
なんか、めちゃくちゃワクワクしてきた。
「っておいおい、命懸けだってのに何ワクワクしてんだ俺……」
そのとき、視界の左上に小さなウィンドウがポンッと浮かび上がった。
《クエスト発生》
【タイトル:討伐依頼?はじめての村へようこそ】
内容:森を抜け、近隣の村「ルアノ村」へ到達せよ。
報酬:登録者数×1.2倍のボーナス
「村……やっと人のいる場所か?」
そうだ、ずっと一人でテンパってたけど、この世界には“人間社会”があるんだ。
食い物も、寝床も、情報も、なにもねぇままじゃマズい。
「行くしかねぇな。バズって、強くなって、生き残るために」
立ち上がり、折れかけた木の棒を握り直す。
その瞬間――
そのとき――森の奥から、悲鳴が響いた。
「――きゃああああああああっ!!」
俺はピタリと足を止めた。
女の子の声。しかも、めっちゃ近い。かなりヤバいトーンだった。
《コメント:ん?今の……/え、誰かいるの?/まさか……イベント発生!?》
「まさか……ドラゴンとかじゃねぇよな?」
冗談のつもりで言った。だが、笑えなかった。
地面が、揺れている。
――ズズン……ズズン……!
「おいおいおい、ウソだろ……」
《緊急通知:中型モンスター“オーガ”の接近を確認。
村娘と思われる少女が襲撃されている模様》
《クエスト更新:「少女を救出せよ!」報酬:登録者数×1.5倍+英雄補正スキル抽選》
「……オーガ!?」
助けるか? いやいや、オーガは無理だろ。にげるか?
でも――
《コメント:逃げんなよ!?/助けてやれって!/今のがバズチャンスだぞ!?》
《コメント:ヒーローになれ、ヒロト》
「……ったく。うるせーな、もう」
俺は棒を握り直す。
画面の向こうの“誰か”に背中を押されながら、森の奥へと走り出した。
「バズるためなら、やってやるよ……! 配信者魂、見せてやる!!」
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回はヒロトが配信者として“バズる意味”を掴むターニングポイントでした。
次回、第4話ではついにヒロイン(っぽい人)が登場!
オーガの襲撃、そして“英雄”としての第一歩が始まります。
感想・評価などいただけたら、超励みになります!引き続きよろしくお願いします!