表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【配信者転生】登録者=強さの世界で底辺実況者が最強に!  作者: 山中海
第二章【異世界配信者、魔界配信編】
29/32

第29話「統制の覇眼ゼルドラン戦・後半」


 リュシアの認定によって共鳴を得た三人は、静かに、そして確かな決意とともに前を向いた。


 ゼルドラン――《統制の覇眼》。魔界を支配する四大魔皇族の一角にして、新魔王から「共同配信者認定」を受けた絶対的存在。その覇眼は空間の理すら捻じ曲げ、あらゆる干渉を無力化する。


「よし、二人とも、いくぞ!」


「……我が覇眼の前に、何をしようと無駄だ」


 空間が、揺れる。


 魔力でも、剣でも、風でもない。ゼルドランの視線が走るだけで、すべてが“無”になる。


「くそっ……あいつ、強すぎる……!」


 ヒロトの斬撃も、ミレリアの大火球も、リュシアの嵐すらも、まるで空間ごと歪んだかのようにゼルドランに届かない。


《コメント:攻撃が消える!?/空間ごと曲がってんのか!?/何も通らない……》


「これが……《統制の覇眼》……!」


 ゼルドランは、静かに歩み出す。


「くだらぬ理想を掲げ、魔界の均衡を乱した罪人たちよ。我が正義で裁いてやろう」


 だが、その前に一人の男が立ちはだかった。


 赤銀の鎧に身を包み、炎のごとくなびく長髪――《烈陽の剣帝》グラディウス。


「お前の“正しさ”が、全てではない」


「……裏切り者が、まだ生きていたか」


「私は魔界のために戦ってきた。だがな、それは“誰かに言われたから”じゃない。“守りたい者がいたから”だ」


 剣を構えるグラディウス。その刃には、炎のような魔力が宿っていた。


「私は今、魔界の未来のためでも、義務のためでもない。――自分で選んだ道のために、戦う!」


《コメント:グラディウスかっけえええ/これが自由の剣!?/推し変しちゃうかも……》


「リュシア、ヒロト、ミレリア。お前たちが信じた“自由”を、貫け!」


「わかってるよ、グラディウスさん……!」


「妾も、もう迷わぬ!」


「俺たちで、ゼルドランを超える!!」


 三人と一人。炎と風と魔法と刃の共鳴が走る。


 だが――


「無駄だ」


 ゼルドランの覇眼が空間を歪め、攻撃を無効化していく。


(駄目だ……このままじゃ、また弾かれる……!)


《コメント:攻撃が当たらない理由、考察班たのむ!/死角攻撃はどう?/やっぱ、覇眼って“視覚依存”だよな》


(……そうか! やつの“正義”は、目に映る世界しか信じていない……!)


「グラディウス、奴の正面を抑えてくれ!俺たちは、あいつの“死角”を突く!」


「任された。貴様の“自由”を見せてみろ!」


 グラディウスが駆ける。斬撃が覇眼の視線を塞ぎ、その間にヒロトが叫ぶ。


「ライブリンク、起動!視聴者の中で、誰か銃を使えるやついないか! 精密射撃の知識がほしい!」


《コメント:おう、任せろ。元・自衛官です。狙撃支援入る。》


 リンク成功。


「……この視界、重心感覚……ミレリア、リュシア、準備はいいか!」


「うむ!」


「はいっ!」


《新スキル発動:“魔導変換”》


 剣先に、異常な魔力が収束していく。銃身のように光を溜め、エネルギーが振動する。


「――この一撃は、未来を作る一撃だ!」


「ふん! そんな攻撃、かき消してやる!」


 ゼルドランが振り返る。グラディウスが弾き飛ばされ、ヒロトに視線が向けられる。


「しまった!!」


 その瞬間――ヒロトの剣から放たれた魔弾が、ゼルドランを打ち抜いた。


 自由を信じる者たちの、祈りと覚悟の一撃。


 《統制の覇眼》が、砕けた。


「……っが、あああああああっ!!」


 ゼルドランが膝をつき、顔を歪める。


「なぜ……後ろから攻撃が……覇眼がきかん……!」


「オマエが見ていたのは幻だ」


「な、なに……?」


「私とリュシアさんの魔法、それに視聴者さんの知識を生かして、鏡のような幻影を作り出しました」


「そんな……幻想に……私が……!」


 グラディウスがボロボロの身体で剣を構え直した。


「幻想じゃない。これは彼らが、それぞれの力を知恵を誰かの為に自分の意思で選び、手に入れた勝利だ。“自由”もそうだ。誰かに与えられるものじゃない。“選び続けること”なんだ。たとえ間違えても、踏み外しても、何度でも自分で選べる。それが――生きるってことだ!!」


 最後の一撃が、ゼルドランを吹き飛ばした。


《コメント:やったああああ!/グラディウス最高!!/自由の勝利だ……!!》


 だが――その勝利の余韻を打ち砕くように、空が裂けた。


 転移門が、再び開く。


 黒い空間から現れたのは――スーツ姿の日本人の青年だった。


「日本人……!?」


「初めまして。俺は、輝也かがや。……新魔王、だよ」


 彼は、倒れたゼルドランを一瞥し、つぶやく。


「もういいよ。つまんない、君」


 次の瞬間、ゼルドランの身体が消えた。声も、痕跡すら残さず。


 広場に、静寂が訪れる。


「あれが……新魔王……?」


 ヒロトの胸が、凍りついた。


現在、登録者68806人


ここまで読んでいたがありがとうございます。


高評価、ブクマ何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ