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【配信者転生】登録者=強さの世界で底辺実況者が最強に!  作者: 山中海
第二章【異世界配信者、魔界配信編】
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第28話「統制の覇眼ゼルドラン戦・前編」



 カラドリアの空を裂いて開いた転移門。その下、門前広場には既に漆黒の軍勢が展開されていた。整然と並ぶ機兵たちの中心で、リュシアが髪を掴まれ、ゼルドランの手に高く持ち上げられていた。


その姿は、見るも無惨だった。


血に濡れ、魔力の残滓すらかすれ、体は小刻みに震えている。かつて魔界を率いた誇り高き姫の姿は、今や見る影もない。


「……そんな……リュシアが……!」


駆け寄ろうとするヒロトを、ミレリアが必死に制止する。


「待って、ヒロトさん!今飛び込んでも……!」


「くっ……!」


《コメント:リュシアさん!?/こんなの嘘だろ……/絶対に許さねぇ……!》


ゼルドランは冷ややかに見下ろしながら言う。


「これが現実だ。“理想”など、所詮は幻想にすぎん」


その瞬間、広場を赤い閃光が貫いた。ゼルドランの手が弾かれ、リュシアが宙を舞う。そして受け止めたのは、赤銀の騎士――グラディウスだった。


「遅くなったな……!」


「グラディウス!」


グラディウスは瀕死のリュシアに小瓶を飲ませ、回復魔法を重ねる。しかし、癒えぬ傷と血の滲みが、彼女の限界を明確に示していた。


「逃げろと言っただろ。」


「お主らがモタモタしとるようじゃったんでの…」


「この意地っ張りめ。休んでろ」


その間にも周囲には続々と機兵が迫り、広場は逃げ場のない包囲網と化していた。


「……退路が、塞がれました……!」


「ふん、逃げ道など元より無い。ここが貴様らの終焉の地だ」


ゼルドランはゆっくりと歩み寄り、静かに言い放つ。


「すべてはお前たちの愚かさが招いた結果だ。グラディウス。“人間との共存”などという幻想を説き、魔界の結束を乱した貴様と、“人間に情を抱いた姫”が混乱の元凶だ」


「……何?」


「今こそ統制の時。我が《覇眼》が導く、“正しき魔界”を築くのだ。秩序のない自由など、ただの無責任にすぎん」


ヒロトは剣を握りしめる。全身が怒りに震えていた。


「お前が決めるな!夢や理想は誰にだって見る自由があるんだ!」


《スキル起動:エンターテイナー・バズブースト》


ヒロトの背後に、無数の光の回線が拡がる。視聴者からの支援が、彼の武装に転送され、剣が煌めく光刃へと変貌する。


「みんな……俺に力をくれッ!!」


《コメント:いけえええ!!/やっちまえヒロト!/その剣は希望だ!》


「喰らえぇぇぇぇッ!!!!!」


叫びと共に振り下ろされた一撃は、大気を裂き、ゼルドランへ直撃する――


――はずだった。


「くだらん」


ゼルドランの一瞥と共に、空間がひずむ。


直後、ヒロトの剣が“吸い込まれ”、そして逆流するようにエネルギーが炸裂する。


「っがあああっ!!!」


ヒロトの体が地面に叩きつけられ、激しく転がった。


「ヒロトさん!!」


「くそ…何が起きたんだ…」


歯を食いしばりながら立ち上がるヒロト。その体には裂傷と焦げ跡が刻まれていた。


「まだだ……終わってない……!」


グラディウスとミレリアも加勢し、三人で総攻撃を仕掛けるが、ゼルドランはまるで動じない。


「くそっ……なんなんだあの技は!」


「見えない魔導障壁だ。しかもそれが時空そのものを捻じ曲げてる……まるで、やつの周りに透明な壁でもあるかのような……!」


「……ふざけんなよ……!」


ゼルドランはさらに力を高め、地面を砕く重力波を発する。


「理想を語る者に、現実の冷たさを教えてやろう」


リュシアのかすれた声が、風の中に漏れる。


「違う……私は……人も、魔族も……共に……」


「黙れ。理想主義者は、死ね」


「リュシア!!!!!」


ゼルドランの手がリュシアを襲おうとした、その瞬間――


リュシアの体が光に包まれる。


《条件達成:リュシアが共同配信者申請を受諾しました》

《リュシアを“共同配信者”に認定しますか?》


彼女は、血を吐きながらも、手を伸ばす。


「……もう……手段は選んでおれん……!妾の願いを……繋いでくれ……!」


《共同配信者:認定完了》

《相互ライブリンク、開始》


次の瞬間、ヒロトとミレリアに、リュシアの記憶と心が流れ込んでくる。


かつての戦い。人間と魔族のはざまで傷つき続けた日々。疑われ、裏切られ、それでも手を伸ばし続けた優しさ。


そして、絶望を超えてなお、信じ続けた“未来”。


「……リュシアの……想いが……!」


《新スキル取得:「魔導変換」》

《認知の力を魔力に変換可能》


リュシアの傷が一気に癒え、眩い光が三人の間に走る。


「……リュシア、よかったのか?この力は……!」


「手段を選んでる場合じゃあるまい。それに言うたじゃろ。お主を信頼しておる。妾の力、存分に使え!」


「あぁ……!」


ヒロトが一歩前に出る。その目に、迷いはなかった。


「自由を信じる力が……幻想じゃないって証明してやる!」


三人が並び立つとき、空気が震えた。


支配か、共存か。恐怖か、希望か。


その答えが、今、ぶつかろうとしていた。


――続く。

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