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【配信者転生】登録者=強さの世界で底辺実況者が最強に!  作者: 山中海
第二章【異世界配信者、魔界配信編】
22/32

第22話「ヴァリエラ戦 後編」

 

ヴァリエラの結界が砕ける音がした。

 ミレリアの魔力が完全に回復し、拘束を打ち破ったのだ。


 その瞬間、ヒロト、リュシア、そしてミレリアの三者が並び立つ。視界には、結界の残光がまだ揺れていた。


「……いいわ。ようやく役者が揃ったというわけね」


 ヴァリエラはゆっくりと立ち上がる。漆黒のドレスが宙に揺れ、冷気が波のように広がっていく。


「今宵の舞台は――終幕! フィナーレにしましょうか!」


 頭上に巨大な氷の大剣が出現し、空間が軋む。

 だが、ヒロトは一歩も引かずに剣を構える。


「あぁ、そうさせてもらうぜ。俺たちの勝利でな!」


 ミレリアとリュシアが左右からその剣に魔力を注ぎ込む。


「――うぉおおおおおおッ!!」


 三者の魔力が一点に収束し、放たれた一撃が氷剣と激突。

 轟音と衝撃波が広間を揺るがし、魔力の軋みが響き渡る。


 しかし次の瞬間――


 広間が眩い光に包まれ、空間が歪んでいく。


「なにっ……!? これは……幻術!?」


「違う……感応じゃ!」リュシアが眉をひそめる。「強大な魔力が衝突したことで、あの女の“記憶”がこちらに流れ込んできておる!」


 視界が反転する。足元の赤絨毯が、汚れた舞台の床に変わった。

 誰かが笑い、鉄格子の奥で少女が泣いている。


『次の出番だぞ、化け物め! 笑わせろ!』


 引きずり出される銀髪の少女。

 裂けたドレス。震える肩。怯えた瞳。


「……これ、ヴァリエラ……?」


「嘘……こんなの……」


 誰もが言葉を失う。

 その光景には、魔族も悪魔もいなかった。そこにいたのは、“人間”の悪意だった。


『あの頃の私を、誰も守ってくれなかった。だから私は――支配する側に回った。美しさと強さで、笑われない存在になるために……』


 声はまるで、自分自身に掛けた呪いのように響いていた。


 やがて幻影が崩れ、現実に引き戻される。


 広間。冷たい空気が再び肌を刺す。


「……そんなの、ただの復讐だ」


 ヒロトが呟く。


「誰かを傷つけていい理由になんかならない!」


「でも……凄く悲しい」ミレリアが震える声で言った。


「あらあら、お優しいこと。お姫様はいいわね……そうしてれば、王子様が助けに来てくれる。私には……来なかったのに」


 ヴァリエラの瞳が、揺れる。


「……ヴァリエラ」


「うるさいッ!! 同情なんていらないわ!私は私のために生きる。たとえ他人の幸せを踏みにじっても!」


 ヴァリエラの魔力が更に増し、周囲に氷の塊が浮かび上がる。

 ヒロトも剣を再び構えた。


「だったら……俺が全力で、止めてやる!!」


 氷の柱が空から降り注ぐ。

 リュシアの炎が空を焼き、ミレリアの光が支援を担う。


「リュシア、氷を頼む! ミレリア、サポートしてくれ!」


「任せておけ!」


「了解です!」


《コメントフロー:起動中》


《コメント:リュシアさんナイスゥ!/ヒロト、その突進ヤバすぎ、気をつけて/ミレリア、右下の魔力集束気をつけて!》


《ライブリンク:発動中》


 剣道全国優勝経験者・KENZOUの記憶がリンクされる。

 ヒロトの構えが鋭くなり、迷いがなくなる。


《KENZOU:ヒロトくん!周りの事は二人に任せて集中!必ず隙ができる、その一瞬、そこを狙え!》


「今だッ!!」


 ミレリアの魔法が相手の守りを破り、リュシアの炎が体勢を崩したその時、迷いのない踏み込みからヒロトの一撃が――


「……これで…終わりだ!!」


 叫びと共に放たれた斬撃が、ヴァリエラを切り裂いた。


 ドレスが舞い、彼女は膝をつく。魔力は収束していく。


「……ふふ。やっぱり、私は“悪い魔女”だったのね。なんて悲しい結末……」


 リュシアが、そっとその身体を抱きしめる。


「お主がこの街でしていたことは、知っておる。裏で孤児たちに支援をしておったのじゃろ。あの子たちは、お主に救われておった」


(そういえば、ルズを預けた施設もかなり綺麗に整備されていたし、子供達も笑顔で溢れてた…)


「……ヴァリエラ、もっと他に方法があったんじゃないか?」


 ヴァリエラは、涙をこぼした。


「さぁね……次は、もう少し“綺麗に”演じられるかしら」


 そう呟くと、彼女の身体は光となって空へと消えていった。


「……行った、か」


 リュシアのつぶやきが、広間に響く。


 ヒロトは剣を納め、ミレリアの手を取った。


「待たせたな、ミレリア」


「……ううん。本当に来てくれてありがとう。私もヒロトさんがいなかったらもしかしたら…」


 ミレリアは悲しげな顔をしていた。そんな時、二人の脳内にアラームが鳴り響いた。


《登録数:49,100人》


《コメント:最高の戦いだった/泣いた/はい!恋のフラグ立ちました!/リュシア様ガチで女神すぎる》


「もう!みんな、うるせぇ!!」


(全く…頼りになるんだかなんだか…)


 そんなヒロトの反応に、ミレリアは少し笑顔を取り戻したようだった。


 こうして戦いは終わった――だが、物語はまだ続いていく。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

ようやくミレリアも合流しました。


今回は四天王的な役割を担う魔皇族のヴァリエラを倒す事に成功しましたが

ヴァリエラの今の力は登録者換算すると60000人程です。本来のヒロトでは勝てないレベルですがスキルの補正と二人のサポート、主にリュシアの力と剣の認知の力が助けになって勝つ事ができました。魔王の剣ですからね!そら強いわ!って感じです。


――次回、『静かなる日常、束の間の再会』お楽しみに!高評価、ブクマしていただけると凄く励みになります。何卒宜しくお願いします。

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