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【配信者転生】登録者=強さの世界で底辺実況者が最強に!  作者: 山中海
第二章【異世界配信者、魔界配信編】
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第19話「異世界配信者、地下競売に潜入してみた」


 ノクシエルの一角――人目を忍ぶように設けられた路地裏の奥。ヒロトは子供達を孤児院に送り届けてリュシアの伝手で手に入れた情報を元に、ある建物の前に立っていた。


「……ここが、例の“闇競売場”か」


 見るからに怪しげな建物。だが、その周囲には華やかな衣装に身を包んだ客らが続々と吸い込まれていく。



「ここの“目玉商品”に、エルフの少女が出たという情報があった。可能性は高いじゃろ」


 リュシアの言葉に、ヒロトの中で確信は固まりかけていた。リュシアも同行を申し出てくれたが、この目立ちすぎる容姿では潜入が困難だ。結局、単独での潜入となった。



(まってろ、ミレリア……絶対に見つけて、取り戻す)


 そう強く決意し、ヒロトは脳内に浮かぶウィンドウを呼び出す。


《スキル使用:コメントフロー》


 視界の隅に、観客のコメント群の中から“有効な声”だけが選別され、浮かび上がる。


《コメント:右手の階段、スタッフっぽい人が出入りしてたよ》《今は入り口に人が集中してる、裏口から入るチャンス! by クラブの警備スタッフ》《あの帽子とサングラスのやつ、つかお!》


(……これが“観客の声”か。頼もしいな)


《スキル使用:ステルスファンモード》


 帽子とサングラスを装着。気配を殺し、出入りするスタッフの背にピッタリくっついて裏口の扉を越え、地下へと潜入した。


◇ ◇ ◇


 そこは、まるで別世界だった。


 広大なホールにはシャンデリアが輝き、音楽が鳴り響く中、魔族たちが贅を尽くした衣装で談笑している。そして舞台上には鉄格子に囲まれた“商品”たちが並び、値札を掲げていた。


 人間、獣人、魔族、中にもは子供までいる……みなここでは“所有される存在”として扱われている。


(……これが、この世界の“現実”か)


 ヒロトの拳が震える。だが怒りを抑え、会場を冷静に見渡す。


 その時――舞台袖の奥で、誰かに腕を引かれて連れて行かれるエルフの少女の姿が見えた。


「……ミレリア!?」


 思わず声を上げそうになり、咄嗟に口を押さえる。


 あの金髪とスタイルは、間違いない。だが、彼女は檻に入っていなかった。どこかに連れて行かれている。


「いやっ…!やめてッ!」


「うっせぇな!お前はもうアタシの所有物なんだよ!奴隷魔法で逆らえないようにして、ギタギタに痛めつけてやるよ。アタシは美しいものを壊すのが大好きなんだ!楽しみにしてな!」


「いやっ!!そんなの!助けてぇ!!…ヒロトさん……!」


(クソッ……!)


 脳内にアラートが鳴る。



《コメント:あれってミレリア!?》《早く行け!》《今すぐ助けろ!》

《登録者数:14,890人》


 怒りと衝撃がヒロトの感情を揺さぶる。視界にコメントが一気に流れ出す。


(……ああ、もちろんだ。絶対に助ける。だが……アイツ、只者じゃねぇ)


 ヒロトは、ミレリアの腕を引いていた女の魔族に視線を向ける。妖艶で美しく、それでいて底知れぬ冷気をまとった女――


(だけど……いくしかねぇか!)


「待つのじゃ!」


 どこからともなく、声が響いた。


「な、なんだ!」


「妾じゃ!」


 その声と共に、小さなコウモリがヒロトのコートから現れる。


「うわっ、魔物……」


「シッ!妾じゃよ、リュシアじゃ。お主が心配でついてきたんじゃ」


「そんな事もできるのか…!」


「まぁの!それよりも、あの女は“ヴァリエラ”。ノクシエルを支配する魔皇族の一人、“幻術師”の異名を持つものじゃ」


「魔皇族……!だけど、今行かないとミレリアが!」


「たわけ!こんな所で正体を現したら、あっという間に囲まれてタコ殴りじゃ!それにあの子にも危害が及ぶやもしれん」


「でも!!」


「まだ大丈夫じゃ……向かう先はわかっておる。それに、奴隷にするには専属の魔術師と儀式の準備が必要じゃ。今日すぐに、というわけにはいくまい。今は一度引いて、態勢を整えるのじゃ」


 その時、脳内ウィンドウが自動的に開く。


《登録者数増加:18,250人》

《コメント:みんな拡散急げーーー!》《ミレリアちゃんを助けるぞ!》《俺たちのミレリアちゃんに手を出したこと悔いるがよい!》


 ヒロトは拳を握りしめ、ヴァリエラの背を睨みつけた。


「リュシア――力を貸してくれ。次は、正面から叩き潰す」



 闇に染まった競売場――その中で、静かに希望の灯が燃え始めていた。


ここまで読んで頂きありがとうございます!


次回、ヒロト、怒りの正面突破へ。


高評価、ブックマークよろしくお願いします

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