第13話「美少女エルフ配信者、爆誕」
リゼルの街に滞在して数日が経った頃、ギルドから一通の連絡が届いた。
──後日、ギルドにて。
「よぉ、来てくれたかヒロト!今日は一つ、お主に頼みたい事があってな」
応接室に通された俺を待っていたのは、あのスキンヘッドのギルドマスターだった。
戦ったときのこともあってか、なんだか妙にフレンドリーだ。
「もう大丈夫なんですか? あの時はすみませんでした……」
「ガハハハ! 気にするな! お主の実力を測り損ねた自分の責任だ!
それより今回は、そんなおまえさんに俺から依頼があってな」
「俺に依頼?」
「あぁ……実は、あのバル=ゼノが東にあるノコギリ山脈の方に飛び去るのが目撃された。
このような辺境に高位の魔族……何かの前触れかもしれん」
(その原因俺なんだけどな…)
「なるほど……それで、その調査を?」
「うむ。先日の戦いでの君の実力、見せてもらった。
あの力があれば、現地の偵察には申し分ない」
(この話し方、奴の存在自体を知ってて当然といった感じだな…バル=ゼノはやはり名のある魔族なんだな……)
「わかりました、引き受けます」
「助かる。山のふもとに小さな拠点がある。物資補給もできるから、相手は高位魔族。くれぐれも無理せず頼むぞ」
──数日後、ノコギリ山へ向かう道中。
「ヒロトさん、ここが“ノコギリ山”の外縁です。なんだか空気が、ピリついてますね……」
「うん。やつはたぶん、この奥だな。……って、あれは」
茂みの先に現れたのは、牙をむいた大型のオオカミのような魔物――二体。
こちらに気づくと同時に、襲いかかってきた。
「あれは…魔狼ですね。なかなか手強い相手です。それに…」
「ミレリア、下がってろ! 俺が――」
「いえ、やらせてください! ……私だって……!」
ミレリアが詠唱を始める。
しかし、敵のスピードが予想以上で、魔物の牙が彼女に迫る――!
「ミレリア!!」
その瞬間、彼女の周囲に光が弾けた。
《判定中:共同配信対象確認……》
《条件達成。ミレリア=フェイン、共同配信者として登録》
《システムリンク開始。感情値フィードバック許可》
《コメント伝達:ON》
「えっ……? な、なにこの感覚……力が……」
《コメント:きたー!ミレリア覚醒!/共同配信者おめ!/ミレリアたんきこえてるー?》
「え…、何?声が聞こえる?」
魔法でできた風の矢が放たれる。いつもより明らかに鋭く、速い。
魔物の一体を一撃で貫き、そのまま吹き飛ばした。
「なっ……えっ……!? な、なんで私、こんなに……!?」
「すげぇ…!なるほど、一緒に配信をする仲間としてスキルがミレリアにも反映してるのか!」
「へ……?」
「つまり、君も今“配信”されてる。俺と同じような力を手に入れたんだ」
「う、嘘……! でも……確かにすごく力が湧いてくる……!」
残る一体に、俺が木刀を構えて突っ込む。
軽くなった身体が空気を切り裂き、木刀の一閃で魔物を叩き伏せた。
「ふぅ……これで片付いたか」
《コメント:ヒロト×ミレリア最強コンビ!/連携ナイス!/推しカプ爆誕》
「推しカプってなんですか?」
「これも聞こえてんのか!?いや、いい!気にしなくていいから!!でも、まさか……一緒に戦うことになるなんて」
「ってかこれ……ミレリアのが強くないか……?」
こうして、ノコギリ山の調査が本格的に始まった。
その奥には、まだ見ぬ“異変の正体”が待ち受けているとは知らずに――。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
今回は、ギルドからの正式依頼でノコギリ山へ向かうという、本格的な冒険スタートの回でした。
そしてなにより、ミレリアが“共同配信者”として覚醒!
次回は、ノコギリ山の奥に待ち受ける“異変”の正体に迫っていきます。
バル=ゼノの再登場も近いかも……?
感想・評価・ブクマ・コメント、励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!
次回もどうぞお楽しみに!