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36話 艇内の探索









 マノンとリナは片手にカンテラ片手に拳銃を持って、沈没艇の中へと入って行った。


 陸戦艇自体が少し斜めになっているせいで少し平衡感覚が狂うが、ひっくり返っている訳でもないので、何とか歩いて移動出来そうだった。

 それに中は思ったより涼しい。


 開けた穴から光が入り、薄っすらと艇内を照らす。

 2人が侵入した所は陸戦艇のブリッジ部分だった様で、各種機材が残っていた。

 しかし損傷した箇所や隙間から、かなりの砂が流れ込んでいる。


 それを見たマノンが言う。


「まだ砂が流れ込んで来ているわね。この量から見ても、沈んでから余り時間は経ってないみたいね」


 するとリナも同意。


「そうだな。もしかしたらさ、これって敵の工作艇に撃沈された巡視艇じゃないのか」


「その可能性が高いわね」


 2人はカンテラの灯りで照らしながら、何か残ってないか見て回るが、これといったものは見つからない。パーツを剥がせば金にはなるだろうが、そんな余裕も時間もない。今は水を見つけるのが最優先である。

 そして周りを観察しながらリナがつぶやく。


「ここは操舵室だな」


「そうみたいね。下へ行きましょうか。ここに水は無さそう」


「さっき飲んだばかりなのによお、もう、喉がカラカラだよ」


 うんうんと首を縦に振りながらマノンが返答。


「私も同じ……」


 何も無いなら長居は無用と、さらに下の階へと降りて行く。巡視艇程度の大きさなら、艇底まで行っても大して時間も掛からない。その内に上手く食糧庫へ行き着くだろうと考えた。

 2人は艇内の底の方へと向かった。取り敢えず水が欲しい。


 艇内は所々に開いた穴やヒビ割れから、砂が入り込んでいる。それで先に行けない区画もあったりと、まるで迷路状態であった。

 道に迷わないようにと、一応は壁に印を付けながら進む2人。

 今のところ魔物は居ない。しかし砂が入り込んでいると言うことは、小型魔物くらいなら、入り込んでいる可能性もあるので油断は出来ない。

 警戒しながら階下へ降りて行く2人。


 そこで壁がきしんでいるのに2人は気が付いた。時々壁がギシギシと音を立てるのだ。そして壁のヒビ割れから、艇内へ砂が入り込んでくる。

 この状態はいずれ大穴が開いて艇内は砂が流れ込むか、場所によっては砂の圧力で押し潰されると思われた。ただそれが数時間後なのか数カ月後なのか、その辺は彼女らに予想は出来なかった。

 今は急ぐしかない。


 そして艇員居住区画に到着した。

 中へと入ってみると、そこは救護所に使ったらしく、乗組員の遺体がいくつもにあった。しかもそこにはいくつかの水筒があった。

 背に腹は代えられないと、血痕の付いた水筒を回収。それを持って一旦外に出た。


「アイナ、戻ったぞ!」


 そう言ってリナが穴から上半身を出して、数個の水筒を持ち上げて見せる。


 アイナは血痕など気にした様子もなく、カビカビなった肉片が張り付いた水筒の水を、むさぼる様に飲んだ。


 そして飲み干すや指差して言った。


「うえ〜、何かこれ、変なのがこびり付いてんだけど〜〜っ!」


 そこでマノンはそれに返答する訳でもなく、自分の機体の背中の荷物から空の増槽のひとつを取り外しながら言った。


「私、ちょっと燃料探して来るわね」


 リナが慌てて言葉を返す。


「それなら、私も行くよ」


 そう言ってリナも自機の空になった増槽を取り外し始めた。


「ええ〜、また私が留守番〜?」


 などとアイナは文句を言いながら、自分の機体の日陰にしゃがみ込む。さらにそこでもブツブツと一人文句を言っていた。


 アイナの文句は無視して2人は早々に作業を終えて、空の増槽を船体の穴に押し込みはじめる。

 そんな中でもマノンは一言アイナに告げた。


「アイナの為に何か美味しいもの見つけて来るから、お留守番頼むわね」

 

 するとアイナは表情を一転。


「だからマノン少尉だ〜い好きっ」

 

 そう言ってマノンに走り寄ろうとするのだが、砂に足を取られてコケて砂に顔を埋めてしまう。

 マノンとリナの2人は、ひたいに手を当ててつぶやく。


「あちゃ〜、やっぱいつものアイナだな」

「はぁ……そうね。こうでなくちゃね」


 こうして2人は艇内へと入って行った。


 前回壁に付けた印を頼りに、下方へと降りて行く2人。特に問題もなく救護所まで来た。今の所は生存者が居る様な痕跡は無い。

 砂の侵入や損傷が酷くて、先に進めない個所がいくつかある。行き止まっては別のルートと、最終的に行き着いたのは動力室の手前の通路だった。通路が押し潰れて、先へ行けないのである。だがこの先には、お目当ての貯蔵庫や食糧庫がある。

 他のルートは砂が入り込み、とてもじゃないが通れない。通れそうなのはここだけだった。


 リナが力任せに通路の邪魔をしているパイプを外そうとすると、激しいきしみ音を響かせて別の壁が艇内へメリ込んでくる。

 驚いて直ぐに手を離すリナ。


「うおおおっと!」


 結局ここも通れないとなげくリナ。

 しかしマノンが何を思ったか、急に腹ばいになる。


「えっと、マノン少尉?」


 驚いたリナが声を掛けるとマノンの返答は。


「ここ、私なら入っていけるかも」


 そう言ってマノンは匍匐ほふく状態で、床に出来た非常に狭い隙間から奥へと入って行く。足は伸ばしたまま、器用にひじだけで少しずつ前へ進んで行く。

 そして潰れた通路の反対側に出たマノンが言った。


「こっちの通路はまだ先に行けそうよ」


 それを聞いたリナも「よしっ」と一言。直ぐに腹ばいになる。

 しかし予想通りの結果となった。


「だからね。自分の身体の大きさ感覚くらい、そろそろ把握しようよ。ね、リナちゃん?」


 そう言ってマノンは、隙間から出て来たリナの頭をナデナデする。


 するとリナは顔を赤らめながら、スゴスゴと戻って行った。

 そして小さな声で「これ……」とレナの頭の代わりに、隙間から空の増槽が押し出されたのだった。


「それじゃあ、ちょっとこの先を見て来るから待っててね」


 そう言ってマノンは1人先を進む。

 この辺は思ったほど損傷はしていない。

 そのまま通路を進み、隔壁を越えるとそこは動力室だった。


 扉を開けるマノン。


 するとカンテラの灯りに照らされて、巨大な魔法プラントが視界に広がった。

 当然のことながら魔法プラントは動いてはいない。


 だがマノンのカンテラ以外の灯りが機械の陰から見えた。


――何かがいる







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