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懲罰部隊の装甲歩兵   作者: 犬尾剣聖


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24話 噴進砲

 








 97式の直ぐ横まで来たところで、マノンがフック付きのワイヤーを投げた。フックは1発で97式に引っ掛かり、半分埋もれた機体を砂の中から引きずり出す。残念ながらパイロットは絶命していた。誘爆はしなかったものの、魔力が漏れて操縦席に入り込んてしまったのだ。魔力過多による死亡であった。

 もう1機も同様にワイヤーで吊り上げたところで、先程の護衛艇が煙幕を怪しがって近付いて来た。


 どうやらマノン達の輸送艇が敵に発見された様だが、煙幕で敵味方の識別が不鮮明なためかまだ攻撃はしてこない。恐らく無線で敵か味方か確認していると思われた。

 それはいづれ敵と分かり、攻撃されるということ。


 そこでマノンは噴射ブーツを自機に装着をしながら言った。


『私が出るわね。敵を混乱させるから、散らばっている他の噴射ブーツを回収して。回収したら一時撤退よ。輸送艇を安全な場所まで連れてって上げてね』


 何とも無茶な命令だが、アイナとリナは何の心配の素振りも見せない。


『わかったよ〜ん、いってらっしゃ〜い』

『了解。でもマノン少尉、予備部品が少ないんだ。機体だけは壊すなよ』


 マノンは『分かったわよ、あとは頼んだわね』と一言、輸送艇の上から機体を発進させた。


 噴射ブーツにも浮遊石が使われていて、砂漠の上でも移動出来る。ただしどういう訳か浮遊石は砂漠の砂の上でないと、この力は100%発揮出来ない。


 初めはヨタヨタと不慣れなマノンだったが、直ぐにコツを掴んだのか慣れた感じで砂漠の上をスケーターの様に移動して行く。

 そして煙幕を抜けると、マノンの目の前には護衛艇が出現した。


「正面とはねっ!?」


 慌ててマノンはスラスターを全開にする。


 急速に右斜め上へと、砂の上を横滑りする機体。


 護衛艇の左船体ギリギリをすり抜ける。


 敵の護衛艇のゴブリン兵は突然現れた89式に大慌てだった。


「敵の装甲歩兵がまだいるぞ!」

「何してる、撃て、撃つんだ!」

「うわぁっ、ぶつかるぞっ」


 マノンは横滑りしながら噴進砲を構える。


 敵護衛艇の船尾からの離れ際、マノンは噴進砲を放った。


 狙ったのは機関部。


 陸戦艇と言えども、所詮は護衛艇クラス。そこまで装甲は厚くはない。

 マノンが放った噴進弾は、護衛艇の機関部の装甲を打ち破り、呪符された魔法を発動させた。


 紫電がバチバチと機関部内部を駆け巡る。


 すると魔道プラントのひとつがストップ。

 一気に速度が落ちた。


 ただ護衛艇の防御砲火が黙っていない。

 狂ったようにマノンの機体に向けて撃ちまくる。


 マノンは距離をとりながら、敵弾を横滑りでかわしていく。


 そして突然、砂を巻き上げてターン。


とどめよ!」


 そう言うや、噴進砲を発射した。


 狙ったのは船尾の穴の空いた所、つまり機関室に直接噴進弾を撃ち込もうというのだ。


 発射された噴進弾は、空中を山なりに飛んで行く。


 そして狙い違わず、機関部に空いた穴に噴進弾は飛び込んだ。


 飛び込んだ噴進弾は直接魔道プラントに直撃。


 するとあっという間に魔力暴走を引き起こし、大爆発を巻き起こした。


「案外もろいのね……」


 そんな事をつぶやくマノン。

 そこへアイナから無線が入る。


『ねえねえマノン少尉。凄い凄い。でもさ〜、燃料はどうなっちゃったのかなぁ〜』


 マノンは『あっ』と言ったきり黙り込んだのだった。どうやらアイナとリナの乗る輸送艇は、撤退せずに近くでマノンの戦いを見ていたらしい。

 そこでさらに追い討ちをかける様に、アイナが言葉を続ける。


『まさか、忘れていたとかは無しの方向でよろしく』


 そこで今度はリナの声が無線に入る。


『おいおいおい、マノン少尉。確かに護衛艇撃沈は凄いよ。凄いけどねえ、お目当ての品物を忘れるのはどうかと思うぞ』


 何も言い返せないマノンだったが、何とか言葉を絞り出す。


『い、いやね。もっとデカい獲物を狙おうかと思ったのよ……な〜んて…………』


 そう言ったは良いが、最後の方は声が小さい。


 するとリナが大きく溜め息。


『はぁ〜、ならよ、ここにいたらいずれ敵に見つかる。煙幕も晴れてきたしな。早いとこ移動して新たな“獲物”を見つけようぜ』


 そしてアイナ。


『私達もブーツは手に入れたからさ、今そっち行くよ〜ん』


『輸送艇は大丈夫なの?』


『うん、下がらせたよ〜ん』


『それなら、狩りを楽しみましょうか』


『あ〜い』

『イエッサー!』


 3人が合流したのだが、アイナとリナの動きがぎこちない。それをマノンが尋ねた。


『アイナ、リナ、2人共もしかして噴射ブーツは初めてなの?』


 するとリナ。


『初めてに決まってんだろ。こんな最新兵器がアラクネ部隊に来るわけないからな』


 そしてアイナ。


『そう、そう。マノン少尉も初めてだよね〜。いきなり乗りこなせるマノン少尉が絶対におかしい〜って』


 それに対してマノン。


『そう言うもんなの? 私にはこんな簡単な乗り物なのにって思うんだけど』


 2人は呆れて返す言葉が無い。


 そこでマノンが再び声を上げた。


『いたわよっ。12時方向に駆逐艇2隻、その奥に大型揚陸艇がいるわね。あの揚陸艇から頂くわよ!』


 すると慌てて返答するアイナとリナ。


『ちょっとストップ〜、無理っ、無理だから〜』

『マノン少尉、いくら何でも駆逐艇2隻もいたら無理だろ。それは無茶ってもんだよ。護衛艇とは違うだろ』


 それに平然と返すマノン。


『あら、でも噴射ブーツがあるからイケると思わない? って言うかイケるでしょ……だから行くわよ!』


 そう言うや、機体の速度を上げるマノン。

 そして追加の言葉を無線で送った。


『そう、そう、味方の識別ランプを忘れないでねっ』


 機体の肩の部分に赤いランプがあり、それが点滅していると味方の識別信号となる。主に空の味方に対する信号である。これが点滅していれば味方飛空艇に、敵と間違って攻撃されないはずである。ただし敵に発見されやすくもなるが。


 早くもマノンは噴進砲を肩に背合い、敵の陸戦艇に狙いを定めている。

 しかし敵も黙ってはいない。

 激しい砲火が向けられた。


 その中をくぐり抜けて尚も前に出るマノンの機体。


 アイナとリナは敵からの砲火を避けるので精一杯で、とてもマノンに付いては行けない。


 そしてマノンは有効射程ギリギリから発射。

直ぐに退避行動をとりつつ弾倉の交換をする。噴進砲は3連装なので、3発撃ったら弾倉の交換が必要だ。

 マノンはそれをマニュアル動作で行う。

 

 その間にも敵弾がマノンに集中する。

 マノンの機体は横滑りを繰り返していて、射線を微妙に逸らしている。敵の射手にしたら「何で当たらない?」となっていた。


 マノンが放った噴進弾はと言うと、敵の駆逐艇のブリッジに吸い込まれていった。


 そして小さな爆発。


 ブリッジには操舵手や指揮官が乗っていたはずで、破壊したならしばらくは、指揮系統の混乱でまともな行動は出来ないとマノンは考えた。


「オマケよ!」

 

 マノンはそうつぶやくと、弾倉交換したばかりの噴進砲でもう1発撃った。狙ったのはブリッジを破壊されて、回避行動が止んだ駆逐艇だ。

 

 噴進弾はブリッジから煙を吐く駆逐艇へと、吸い込まれていった。







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