表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

現代文学集

卒業待ちのカレンダー(なろうラジオ大賞6 参加作品 テーマ:卒業、カレンダー)

 桜の花びらが舞う三月のある日、体育館の片隅で私はカレンダーを眺めていた。十二枚の薄い紙には私たちの三年間が詰まっている。入学式の集合写真から始まり、運動会、文化祭、修学旅行と続いていく。


 そして最後は三年経ってから同じ場所で再び撮った集合写真だ。その全ては担任がクラスのために作ってくれたカレンダーだ。


「この写真懐かしいな」隣から声が聞こえて振り向くと、そこにはクラスメートの梅野隆太がいた。

「坂本ってば体育祭のリレーで転びかけてたよな」


「今更そんなこと言わないでよ!」と私は笑い返す。そのせいで最後抜かれてしまい泣いてしまったことまでが、ついこの間の出来事のように思い出された。


 苦笑しながらめくっていき最後の一枚で手が止まった。真ん中に大きく『卒業式』と書かれた三月のページ。写真は数日前に撮ったクラス全員の笑顔だった。でもその下に小さく控えめな一文が書き加えてある。


『また会おう、絶対に』まさに青春な一言を見て私は少々赤面していた。


「これ隆太君がが書いたの?」


「なんだか終わっちゃうのが寂しくてさ。でもみんなそれぞれ新しい道に進むんだよな」隆太は少し照れくさそうに頭をかいた。


 その言葉に私はハッとした。卒業とは終わりではなくスタートなのだと。けれど新たな道へ進むことには少しの不安も混じる。この三年間を全部置いてきぼりにする感覚もある。


「でもまた会いたいな、みんなと。もちろん隆太君ともね」


「じゃあさ、このカレンダーを約束の証にしよう」隆太はそう言うと、カレンダーの空いているスペースに日付を書き込んだ。

「五年後の今日、またここに集まるってことでいいな?」


「随分とクサいこと言うんだね。でもそれまで皆が覚えてるかどうか……」


「覚えてるさ。だってこれが俺たちの『卒業カレンダー』なんだから」


「なにそれ、意味わかんなーい」私たちは笑いながらハイタッチをした。その瞬間、体育館にに飾り付けられた桜の花びら(折り紙)がカレンダーの上からひらひらと舞い落ちてくる。


 卒業はただの区切りでしかない。でもその先で新しいなにかが始まっていくのだと思えば、なんとなく不安も消えて行くような気がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ