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EXEP1-01「ゴールドマン来日」

 成田空港──


「オォウ! ヒッサシブリネー! ジャッペェエエエン♪」


 入国手続きを済ませ、到着ロビーで両手をワイの字に広げながら陽気に騒いでいるひとりの男。


 彼の名は、デイビッド・ゴールドマン。

 アメリカ出身のプロ・クロスレイダーで、その腕前は世界でもトップクラスと言われている。


 同時にコレクターとしても有名で、特に世界中のクロスレイダーの関心を引いているのが、彼のクロスレイドにおけるモンスターコレクションのラインナップだ。



 クロスレイドのモンスターを手に入れる方法は、基本的に拡張パックからが主な手段となる。

 だが、それは一般的な話であって、わずかながら他のルートからの入手手段も確実に存在しているのだ。


 例えば──

 大会の景品やプロモーション用の販促物。そして懸賞品など。企業側が特別に用意した限定品。こういった物の唯一性は絶対だということだ。


 仕組みは不明だが、実際にクロスレイドの拡張パックからは限りなく希少性の高いオンリーワンクラスのモンスターが出現することもあると言われている。

 だが、それは手に入れた人物すらも事実の検証が困難であるという、ある意味で不透明性も同時に兼ね備えていることに他ならないのだ。


 だが限定品や大会専用の賞品というのは一般的に販売されている品とは別のルートで特別に製造されたものが多く、その希少性においては検証するまでもなく確定的であることは間違いない。

 強さという観点だけで考えればその価値はまちまちだが、希少価値という意味においては無類の唯一性と絶対性を誇っている。


 そして、このデイビッド・ゴールドマンが世界で注目されるようになった最大の要因は、そのコレククター癖なわけだが──

 彼は世界にひとつしか存在しないと言われているたぐいのモンスターをいくつも所有していることで有名なのだ。


 そのあまりにも豪華すぎるコレクションの数々に、ちまたではデイビッドに関するよくない噂も流れていた。それは、まことしやかにささやかれている『ゴールドマンには裏の顔が存在する』という噂。

 普段は陽気で人当たりも良いデイビッドだが、実は世界各地で多発しているというレア狩りの犯人なのではないかという噂だ。


 クロスレイドにおけるレア狩りは昔からあったが、目立つほど世界中で多発し始めたのは最近のことである。

 そして、その中でも最近懸念されているのが激レア狩り。数えるほどしか存在しないと言われている激レアモンスターの被害が多発しており、その手口から同一犯の犯行と見られていた。


 ただ──

 不可解なのは最近のレア狩りにおける被害件数の急激な増加の割に、被害者からの訴えが圧倒的に少ないということ。

 特に限りなく希少な限定品であれば所有者の特定も可能で、実際に警察が数名の被害者と接触していることも事実なのだ。


 だが、どういうわけか被害者たちが口を揃えて言うのは『もう関わりたくない』という言葉ばかりだという。そして『自分は何も知らない』と首を振って項垂うなだれるのみらしいのだ。


 恐らく警察が接触した被害者の中に、犯人の姿を見た者がいる可能性は高い。

 ところが誰ひとりとして口を割らないのだ。被害者にも関わらず──。


 そもそも普通であれば、少なからず被害届があって然るべきなのだが、それすらないのが実に不自然なのである。

 そして、すべての被害者たちに共通して言えることは、例外なく彼らの顔が恐怖に満ちていたということだけらしいのだ。



 このクロスレイドにおけるレア狩りだが──

 当然、日本に限った話ではない。世界各国でも同様に増加傾向にあるのだ。それは、もちろんアメリカの地においても言えることだった。



 成田空港に到着後、しばらくは到着ロビーで子供のようにはしゃいでいたデイビッドだったが、その直後──

 突然別人のように大人しくなり、何事もなかったようにその場をあとにしたのだった。


 その様子を見ていた周囲の人々は、デイビッドの異様な変貌ぶりに寒気を覚えたという。



◇ ◆ ◇


 東京、秋葉原。


「ヤッパリ日本ニッポンエバ、秋葉原アキハバラデスヨネー!」


 デイビッドは、ご機嫌で秋葉原を探索していた。

 あちこちでアニメグッズを買い漁り、メイド喫茶を堪能してから目的地に向けて足を進めていたのだ。



 デイビッドが来日した理由──

 それは、秋葉原にあるクロスレイド専門店『SEEDシード』が主催するクロスレイド・シングルス大会だ。

 そしてその真の目的は、優勝賞品である限定金将モンスター〈鎧武者よろいむしゃゴースト〉のモンスターユニットとそのカード────。



 コレクターであるデイビッドは、こうした限定モンスターが優勝賞品として与えられる大会を狙って出場することは多い。もちろん基本的には母国のアメリカで行われている大会が主だが、状況によっては他国の大会にも精力的に出場しているのだ。

 世界各国で開催される賞品ありの大会にすべて出場するのは現実的に難しいため、デイビッドは海外の限定モンスターについてはオークションなどで手に入れることも多いと言われている。


 ただ今回の大会は秋葉原というデイビッドお気に入りの地で開催されるうえに、モンスターのデザインなどが好みらしく、来日してまで大会出場することを決めたそうだ。



 デイビッドは、その身に得体の知れない雰囲気をまとって不気味に笑っている。

 その視線の先にあるのは、今回のシングルス大会を主催するクロスレイド専門店『SEED』。


「金将〈鎧武者ヨロイムシャゴースト〉──。絶対ゼッタイワタシが、レテミセマショウ!」

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